深掘り*タカラヅカ

男役イメージの研究で修士号を取得した筆者が、宝塚をあれこれマニアックに深掘りします。

『シトラスの風』と映画

こんばんは🍋

 

今回取り上げるのは、私の大好きなレヴューシトラスの風』です✨

 

初演・Ⅱ・Ⅲ・Sunriseと、今までに四度上演されているこの作品。

華やかで心躍るシーンが様々繰り広げられますが、その中には映画に影響を受けているシーンが数多くあります。

 

そこで今回は「『シトラスの風』と映画」と題し、このことについて語っていきたいと思います🎦

 

 

 

 

岡田先生と映画

シトラスの風』の内容について触れる前に、作者の岡田敬二先生について少し確認しておきましょう。

ロマンチック・レビューシリーズを提唱し、「日本レヴュー界の第一人者」とも称される先生ですが、学生時代の夢は映画監督になることだったそうです。

 

大学は早稲田大学の文学部でしたが、映画研究会に所属して、映画監督になる準備をしたいなと思って、毎日のように勉強よりも映画を見続けるような大学生活でした*1

 

学生時代のこのエピソードを読めば、先生の作品には映画の影響が多くみられるということも納得ですね!!

 

 

ステート・フェア

ここからは、実際に作品の内容について触れていきます。

 

まずは、ステート・フェアー」のシーンから🎪

 

このシーンはもともと、先生の作品である『ラ・カンタータ!』*2の一場面であったのですが、凰稀かなめさん主演で再演された際にこの作品に組み込まれ、その後ⅢやSunriseにも受け継がれました。

 

 

また何といってもこのシーンは、私が宝塚の中で一番好きなシーンなのです❤

フリルいっぱいのお衣装で着飾った娘役さんたちや、甘くかわいらしいラブストーリー、そしてどこかノスタルジックで、心をくすぐるような雰囲気…

 

映像で何度見返したか分からないほど、本当に大好きなシーンです。

 

 

さて、このシーンについて岡田先生は、以下のように語っておられます。

 

ジュディ・ガーランドという、映画「オズの魔法使い」などで主役をしていた伝説のミュージカル女優の雰囲気で、トロリーのセット前に真っ白な衣装の星風が出てくる*3

 

ここで言及されたジュディ・ガーランドは、昨年伝記映画が公開されるなど、日本でも有名なハリウッド女優ですよね。

 

ja.wikipedia.org

 

 

また、「カンカントロリー乗り~♪」というかわいらしい歌詞が印象に残る、「The Trolley Song」という曲は、

The Trolley Song(1)

The Trolley Song(1)

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このジュディ・ガーランド主演の映画若草の頃の曲なのです!!

 

ja.wikipedia.org

 


MEET ME IN ST. LOUIS ('44): "The Trolley Song"

 

 

この映画の舞台である、20世紀初頭のアメリカの古き良き雰囲気が、舞台でもよく伝わってきますよね~💕

 

 

 

また、このシーンのお衣装にそっくりなものが、映画の中にも登場します。


Meet Me in St. Louis Ending Scene - Judy Garland

 

 

 

あと、赤いリボンでウェストマークしている点や、パラソルを持っている点は、映画メリー・ポピンズの影響かなぁと思っています。

 

movies.yahoo.co.jp

 

 

さて、このシーンはストーリー仕立てとなっており、ステート・フェアーに来たフレッドとアグネスが突然の雷雨にみまわれ、雨宿りを通じて恋に落ちるという展開になっています。

 

幻想的な雰囲気の中での、二人の雨宿りデュエットダンス。

ここで使われている「A Fine Romance」は、

A Fine Romance

A Fine Romance

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フレッド・アステア主演の『有頂天時代』で使われた曲です。

ja.wikipedia.org

 

A Fine Romance

A Fine Romance

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また、ここのデュエットダンスは、同じくアステア主演の『バンド・ワゴン』に登場するダンスシーンのオマージュになっているみたいです。

ja.wikipedia.org

 


Band Wagon - Dancing In The Dark de MGM Studio

 

このシーンは、映画ラ・ラ・ランドにもオマージュとして登場したとのことです。

 

 

 

またこれらの映画から、このシーンに登場する役名がなぜ「フレッド」であるのかが、よく分かるようになっていますね。

 

ja.wikipedia.org

 

 

 

間奏曲「Paradiso」

Sunriseでは「ステート・フェアー」の後の間奏曲に、「Paradiso」という曲が使われました。

PARADISO

PARADISO

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この曲はもともと先生の作品である『ダンディズム!』*4で登場した後、その続編である『ネオ・ダンディズム!-男の美学-』*5、そしてSunriseにも引き継がれました。

 

この曲を歌った芹香さんのお衣装は、湖月さんのものを踏襲していますね~🐉

個人的に、チャイナ服+ソフト帽という一見合わなさそうだけれど、実際合わせてみたら死ぬほどかっこいいという組み合わせを考えられた方は、まさに天才だと思っております…!!!!!

 

いやはや、このシーンで大人の色気を放出しまくっていた芹香さんは、大変危険な存在でございました。。。

 

 

そしてこの曲は、映画『疵』の主題歌だそうです。

ja.wikipedia.org

 

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間奏曲「Smile」

ⅡとⅢで間奏曲として使われていたのが、「Smile」という曲。

 

Smile

Smile

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これは、チャップリン主演の映画『モダン・タイムス』のテーマ曲だそうです。

 

ja.wikipedia.org

 

スマイル(モダン・タイムス)

スマイル(モダン・タイムス)

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間奏曲「I Won't Dance」

初演の間奏曲として、和央ようかさんが歌ったのが「I Won't Dance」という曲。

これは、映画ロバータの曲だそうです。

ja.wikipedia.org

 

I Won't Dance

I Won't Dance

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 (またまたフレッド・アステア。)

 

 

 

「アマポーラ」

Sunriseで新しく作られた中詰めのシーン、「アマポーラ」。

 ここで使われている「Amapola」は、

ja.wikipedia.org

 

なんと、映画Once Upon a Time in Americaに使われていた曲だそうです❄

 

思わぬところでタカラヅカとの関連を発見し、とても驚きました!!!

 

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ〜アマポーラ

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余談になりますが、アマポーラはスペイン語ひなげしの意だそうです。

 

 

 

 

ノスタルジア

美しいオペラの曲に酔いしれる、ストーリー仕立てのこのシーン。

岡田先生は着想について、以下のように語っておられます。

イタリアの監督のルキノ・ヴィスコンティ「夏の嵐」「山猫」を意識した、イタリア貴族の三角関係の場面を作りました*6

 

 

…というわけで、このシーンにはこの二つの映画の影響があるのは、間違いなさそうですね!!

 

ja.wikipedia.org

 

ja.wikipedia.org

 

 

 

『山猫』の予告編を見る限りでは、ヒロインの女性のセンター分けの前髪や白いドレス、そして軍服とドレスが入り混じった華やかな舞踏会といった点に、確かに影響を感じますね!!

 

 

 

またまた余談になりますが、植田景子先生の『落陽のパレルモ』も、同じく『山猫』の設定に似たモチーフを使っているそうです*7

確かに、ふづきさんのお衣装・髪形など、似たところがあるような気がします。

 

(この作品、ふづきさんのお衣装がどれも素敵だったなぁ…)

 

 

 

 

誕生

 「誕生」は、初演にのみ存在したシーンです。

 

このシーンについて、演劇コラムニストの石井啓夫氏は「時代、人間、文明批判をチャップリン映画を髣髴させるように構成。*8」と語っておられます。

では一体、「誕生」のどのあたりが、チャップリン映画を想起させるのでしょうか?

 

 

それは、このシーンのセットやメッセージ性にあると考えられます。

シーンの前半は、以下のように説明されます。

 

カニックな歯車などの中に、トンボ、蝶などが組み込まれているセット。仮面をつけた男女が人間疎外、断絶感を踊る(後略)*9

 

確かにこのシーンでは、歯車のセットが印象的だったことをよく覚えています。 

そして、前述の「Smile」が使われていたチャップリンの『モダン・タイムス』は、歯車のシーンが有名ですよね。

 

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また『モダン・タイムス』の内容として、

 

資本主義社会や機械文明を題材に取った作品で、労働者の個人の尊厳が失われ、機械の一部分のようになっている世の中を笑いで表現している。*10

 

ということが挙げられますが、そのチャップリンが歯車に巻き込まれるシーンによって、上述のことが示されていると考えられます。

 

 

 

そして、「誕生」のシーンで歌われる「自然に生きよう」

自然に生きよう

自然に生きよう

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の歌詞の一部を紹介しますと…

 

 

アスファルトが私たちの魂を毒し 醜い欲望と憎悪が燃え上がり 私たちを悲惨と流血に追い立てる」

「スピードは私たち自身を閉じ込め 機械は私たちに物足りなさを植えつけた」

「知識は私たちを皮肉屋に仕立て 私たちの賢さは冷血漢を作った」

「私たちはあまりにも多くを知りすぎ、あまりにも感じることが少なすぎる」

 

「空気はますますけがされ 緑の大地は削られ茶色の身をさらし」

「国境は私たちに不信と疑惑を芽生えさせ 教育は私たちに偏見と断絶を与えた」

 

 

このような歌詞より、「誕生」のシーンには機械化や近代化を批判するような、強いメッセージ性が感じられます。

 

 

 

以上より、メカニック(=機械的な)歯車や、機械文明や近代化を批判するような歌詞のメッセージ性が、「誕生」においてチャップリン映画、そしておそらくは『モダン・タイムス』を髣髴とさせるのではないでしょうか。

 

 

 

 

おわりに

今回は 『シトラスの風』における映画の影響をたくさん見てきましたが、調べてみて、岡田先生は本当に映画を愛していらっしゃるのだなと感じました。

 

GW中は、元ネタになった映画を見ることにも挑戦したいな~と思っています🌟

 

 

 

また、岡田先生の長男であるテレビ演出家の岡田倫太郎氏は、Sunriseについて自身のブログに詳しく書いておられます。

 

この記事を書くにあたり、分からない箇所をいくつか参照させていただきました。

映画との関連以外にもいろいろ触れておられますので、ぜひぜひご覧くださいませ。

 

rokada.exblog.jp

 

 

 

作品に使われている原曲を調べる際、いつもお世話になっているサイトです⇓

passionswallow.web.fc2.com

 

 

 

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*1:岡田敬二『岡田敬二 ロマンチック・レビュー』阪急コミュニケーションズ、2009年、p.46。

*2:1994年、紫苑ゆうさん主演の星組によって上演。

*3:「『シトラスの風-Sunrise-』座談会」『歌劇』2018年3月号、宝塚クリエイティブアーツ、p.66。

*4:1995年、真矢みきさん主演の花組によって上演。

*5:2006年、湖月わたるさん主演の星組によって初演。

*6:岡田、前掲書、p.92。

*7:花組「落陽のパレルモ」製作発表 スタッフ編

*8:天は赤い河のほとり』『シトラスの風-Sunrise-』公演プログラム、阪急電鉄歌劇事業部、2018年、p.39。

*9:岡田、前掲書、p.170。

*10:モダン・タイムス - Wikipedia

【考察】スカーレットの白いドレスは何を象徴するか?

こんばんは❀

 

今回取り上げる作品は、宝塚の名作風と共に去りぬ

その中でも、ヒロイン・スカーレットといえばこれ!ともいうべき、冒頭で着用される白色のドレス(以下、問題のドレスと表記)に焦点を当て、あれこれ迫っていきます✨

 

 

 

f:id:Natsu3ichi:20200425163806j:plain

 (またまた大昔に描いた、真咲さんスカーレット。)

 

※以下、基本的には2015年中日劇場公演版に沿って、話を進めていきます。

 

 

 

 

 

 

1.ドレスについて

今回扱う問題のドレスは「第1場 樫の木屋敷の庭園」、つまり冒頭のウィルクス家の野外パーティーでスカーレットが着ているドレスです。

 

公演によって差はありますが、全体は白色で、所々に緑色という色遣いになっています。

スカート部分はティアード(段々フリル)のデザイン。また、胸元が大きく開けられているというのが後々大きなポイントになってくるので、ぜひ覚えておいてください。

 

このデザインは、明らかに映画版『風と共に去りぬ』の影響があると考えられます。

 

映画において、ウィルクス家のパーティーで着られているドレスがこちらです。

f:id:Natsu3ichi:20200425163925p:plain

 

肩のデザインといい、白×緑の色遣いといい、映画の影響があることは明らかでしょう。

 

一方、映画のドレスのスカートの部分は、宝塚版とは違いティアードにはなっていませんが、これには脚本の影響があると考えられます。

 

 

宝塚版はいきなりウィルクス家のパーティーから始まりますが、映画版はその前日に、

ある登場人物(タールトン兄弟)からアシュレの婚約を聞かされる

というシーンがあります。

 

また、その時のスカーレットのドレスは、こちらです。

f:id:Natsu3ichi:20200425164615p:plain

 

スカートがティアードになっていますね。

 

 

一方宝塚版の脚本では、スカーレットがアシュレの婚約を聞かされるのは、当日ウィルクス家のパーティーとなっています。

 

 

よって宝塚版のドレスは、

f:id:Natsu3ichi:20200425163925p:plain

基本形(ウィルクス家のパーティー

f:id:Natsu3ichi:20200425164615p:plain

ティアード(アシュレの婚約を知る)



f:id:Natsu3ichi:20200425163806j:plain

宝塚版 ウィルクス家のパーティーのドレス

 

 

という、脚本の各要素をドレスに投影したデザインとなっていると考えられます。

 

 

Youtubeの動画をキャプチャしたので画質が荒いですが、もっときれいな画像がこちらで紹介されています~!)

cahiersdemode.com

 

 

 

2.エチケット違反

次にこのドレスのミソ、胸元が大きく開いているという点に注目します。

 

小説版、そしてそれに準ずる映画版のこのドレスが、作品の中でどのようなものとして登場するかについて、以下のような先行研究があります。

 

どれほどエチケット違反であるとしても、スカーレットは、この昼間には似つかわしくない、少し派手な緑のドレスが、自分を美しく見せてくれるものとして、信じて疑わなかったのでした*1

 

つまりこのドレスは、エチケット違反ではあるが、彼女を一番美しく見せるものとして作品に登場します。

 

しかし、このドレスの一体どの部分が、エチケット違反なのでしょうか。

…それは何度も繰り返しますが、胸元が大きく開いているという点です。

 

このシーンは1861年を舞台としていること、またスカーレットは南部貴族の出身ということ、そして「お昼寝の時間」ということがしきりに言われているため、時間は昼頃であるということを前提としたうえで…

 

19世紀の上流階級のお嬢様にとっては、実際に昼間に着るドレスと、夕方以降に着るドレスには厳密に区別がありました*2

 

具体的に言うと、ドレスは昼の間はいつも襟を高い位置で閉じ、深い襟開きは夜にのみ許されたのです*3

 

【具体例】

昼のドレス:|1850s-1860sのコレクション|KCI デジタル・アーカイブス

夜のドレス:|1850s-1860sのコレクション|KCI デジタル・アーカイブス

 

 

つまり、胸元が閉じたドレスを着るべきであるにもかかわらず、昼に胸元の大きく開いたドレスを着ているという点で、スカーレットはエチケット違反であるということが分かります。

 

 

 

では、エチケット違反であるにもかかわらず、なぜこのドレスをスカーレットは選んだのでしょうか??

 

 

それは、自身が一番美しく見えるドレスを着て、大好きなアシュレの気を惹くために他なりませんでした。

 

前述のとおり、小説・映画において彼女は、パーティーの前日にアシュレの婚約を聞かされています。

しかも、この野外パーティーはアシュレの婚約披露の場であり、婚約が決まっているにもかかわらず、アシュレは自分のことが好きだと思い込み、なんとか彼の気を惹こうと画策して彼女はこのドレスを選んだのです*4

 

 

 

エチケット違反を犯してでも、自分を美しく見せようとして選んだこのドレスには、彼女のアシュレへの強い恋心が感じられます。

 

 

 

3.宝塚版における問題点について

一方宝塚版における問題のドレスは、映画版が持つような意味は失われていると考えられます。

 

 

理由は2つあります。一つ目は、周りの登場人物たちの衣装の形です。

 

omoshii.com

 

こちらのサイトに載っている舞台写真の、2枚目・16枚目(野外パーティーのシーン)にご注目ください。

 

スカーレットの周りにいる、紫のドレスを着た南部の令嬢たちの衣装は、なんとスカーレットと同じく胸元が大きく開いているのです!

また写真には写っていませんが、彼女の2人の妹の衣装も同じくです。

 

 

比較対象:映画版における南部の令嬢たち。

胸元が閉じており、エチケットを守った服装をしています。

f:id:Natsu3ichi:20200425175112p:plain

 

つまり、宝塚版では周りの衣装の形によって、スカーレットがエチケット違反を犯しているということは分かりづらくなって(というか、そもそもエチケット自体が無くなって?)います。

 

 

また宝塚版では、問題のドレスをアシュレのために選んだという展開にはなっていません。

なぜなら脚本の変更により、彼女がアシュレの婚約を聞かされるのは、このドレスを着ているときであり、アシュレに告白をするときには、別の赤いドレスに着替えているからです。

 

 

以上より、

・宝塚版では、衣装や脚本の変更がなされているということ

・そしてその変更により、問題のドレスが「エチケット違反ではあるが、アシュレの気を惹くために選んだ、自分を一番美しく見せる」ものとして登場するという先行研究は、宝塚版には当てはまらないということ

 

が言えるでしょう。

 

 

せめて周りの令嬢や妹たちのドレスの胸元が閉じていたら、「たとえエチケット違反を犯してでも、自分を美しく見せることに執着する」という、スカーレットの破天荒さをこのドレスでも伝えられるのですが。。。

 

 

 

4.スカーレットⅡとその衣装について

宝塚版の問題のドレスは、先行研究のような意味は持たないということが分かりました。

では、宝塚版の問題のドレスは、「只の可愛いドレス」として登場するのでしょうか? 

 

私は宝塚版では、問題のドレスはあるものを象徴していると考えます。

そしてそのカギを握るのが、スカーレットⅡという登場人物です。

 

 

脚本・演出を担当された植田紳爾先生は、スカーレットⅡはスカーレットの本音を語る役であると述べています*5

 

またスカーレットⅡが登場する全9場のうち、後半6場はスカーレットと同じ衣装で登場するのに対し、前半3場は問題のドレスで登場します。

 

 

具体例として…

下記サイト3枚目の舞台写真:スカーレットⅡはスカーレットと同じ衣装ではなく、問題のドレスを着ています。

omoshii.com

 

一方、レットに会いに行こうと決意するシーンや、「自分が本当に愛していたのはレットだった」と気づくシーンでは、スカーレットⅡはスカーレットと同じ衣装を着ています。

これらの衣装の違いは、大いに注目すべきことでしょう。

 

 

次に、スカーレットⅡが問題のドレスを着て登場するシーンについて詳しく見ていきます。

 

その衣装でスカーレットⅡが初めに登場するのは第7場ですが、これは全体を通して彼女の初登場シーンでもあります。

結婚して未亡人となり、「スカーレット・"ハミルトン"は私です」と名乗るスカーレットに対し、彼女は「スカーレット・"オハラ"は私です」と名乗ります。

 

このことから問題のドレスと、結婚前の少女時代のスカーレットが結び付けられているという可能性が指摘できるでしょう。

 

また、スカーレットⅡはスカーレットの本音を表すという役割を持つため、スカーレットⅡが問題のドレスを着ている際には、彼女の本音=心のうちは少女時代のままということが言えます。

 

 

ところで、『風と共に去りぬ』という物語は、スカーレットの愛の対象が少女時代の夢から大人の現実へと移行する成長の物語であるとされています*6

 

ここでいう「少女時代の夢」はアシュレを、「大人の現実」はレット・バトラーを指すと考えられますが、確かに物語が進むにつれ、スカーレットが愛する相手はアシュレからレットへと変わっていきますよね。

 

 

なので、少女時代のスカーレットというのは、「ただアシュレを愛していて、アシュレも自分のことを愛していると信じている状態」(=アシュレに夢を見ている状態)であるとも言い換えられるでしょう。

 

 

 

次に、スカーレットⅡが問題のドレスで登場する最後のシーンである、第10場に注目します。スカーレットⅡの衣装から、スカーレットの心の内はまだ少女時代の状態であると推測できます。

 

このシーンでスカーレットは、スカーレットⅡに促されて、休暇で戦場から戻ってきたアシュレに再び告白をします。しかし彼はスカーレットの言葉を遮り、再び戦場へと戻っていきます。

 

 

ここで重要なのは、スカーレットはやはりアシュレに思いを受け取ってもらえないということです。

 

 

「アシュレに再び振られてしまう」という経験により、「ただアシュレを愛していて、アシュレも自分のことを愛していると信じ込んでいる」状態のスカーレットは、厳しい現実を突きつけられることとなります。

 

この「アシュレは自分のことを愛していない」と気づく経験は、そのようなスカーレットの少女時代に終止符をうつものであったとも言い換えられないでしょうか。

 

 

そしてだからこそ、スカーレットⅡが問題のドレスで登場するのは、このシーンが最後となるのではないでしょうか。

 

 

 

5.おわりに

今回扱った問題のドレスは映画版・宝塚版ともに、形は違えどアシュレへの愛が伝わってくるものであったとも言えるでしょう。

 

ですが、宝塚版において問題のドレスは

アシュレに夢を見ていた、少女時代のスカーレットを象徴するものである

と、この考察を通じて結論付けます。

 

 

 

 

 

画像…こちらより。

https://www.youtube.com/watch?v=nzns3KWDELM&list=PLxdQvjv28-xjZP1UDMOgY1dWl-k_Pl4J2

 

 

 

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*1:内村里奈『ヨーロッパ 服飾物語』北樹出版、2016年、p.153。

*2:内村、前掲書、p.153。

*3:ゲルトルート・レーネルト『絵とたどるモードの歴史』黒川祐子訳、中央公論美術出版、2011年、p.154。

*4:内村、前掲書、p.152。

*5:植田紳爾『宝塚, わがタカラヅカ白水社、1997年、p.155。

*6:天野道映『宝塚の快楽 名作への誘い』新書館、1997年、p.123。

酒井レヴューと銀の薔薇

こんばんは💐

 

 

先週はスカイステージにて、紅さんのご卒業公演の放送もありましたね🌟

 

レヴューの方は、演出家の酒井澄夫先生が担当されました。

 

 

特に近年の酒井先生のレヴューは、どう転んでも清楚にしかならず、心にしみじみと染み渡るような雰囲気が魅力的です。

 

また、歌詞の日本語の美しさも大好きなポイントの一つです。

 

 

そんな先生のレヴューをいくつか見ていく中で、主題歌の歌詞に「銀の薔薇」が登場しているという点が気になったので、今回はそれについて書きます🌹

 

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(大昔に描いた、『Bouquet de TAKARAZUKA』の綺咲愛里さん。)



 

『エンター・ザ・レビュー』

春野寿美礼さん主演の花組により、2005年に初演されたレビュー。

 

「夢を見れば…」の歌詞には、

空にきらめく 二人の愛の 銀の薔薇

 

とあります。

 

 

『Bouquet de TAKARAZUKA』

紅ゆずるさん主演の星組により、2017年に初演されたレビュー。

 

「Bouquet de TAKARAZUKA」には、

銀の薔薇 美しく 夜空に咲き香る

 

という歌詞が。

 

 

 

『Èclair Brillant』

 そしてこちらは、紅さんのサヨナラ公演のレヴュー。

 

「Èclair Brillant」にはまたまた同じく、

夜空に 撒かれた 銀の薔薇

 

とありました。

 

 

 

このように、酒井先生のレヴューの主題歌には「銀の薔薇」という歌詞が頻出しています。

 

 

 

この銀の薔薇は、いったい何を示すのか…?

 

3つの共通点から、「空にあるもの」であることは明らかですが、残念ながら詳しくは分かりませんでした…

ですが、公演プログラムや『歌劇』の座談会に何かヒントがあるかもしれないので、池田文庫でまた確認したいと思います~!

 

 

ちなみに、『エンター・ザ・レビュー』から『Bouquet de TAKARAZUKA』の間に、先生は『レ・ビジュー・ブリアン』と『Passion 愛の旅』を発表されています。

こちらの主題歌の歌詞を調べたところ、「銀の薔薇」は登場していませんでした。

 

 

タカラヅカ関連で言いますと、真琴つばささん主演の『愛のソナタ』には、「銀のばら」が登場するみたいです。

このお芝居の解説は以下です。


宮廷では婚約に先立って、花婿から花嫁に銀のばらを贈る習慣があり、そのばらを届ける使者を"ばらの騎士"と呼んだ。

華麗な貴族の世界を舞台に、銀のばらを巡るいくつもの恋模様が織りなすロマンティック・ストーリー*1

 

(これめっちゃ見たいんですけど、権利関係で放送されないのだろうか…)

 

 

『愛のソナタ』は、R・シュトラウスの《ばらの騎士》を原作としています。

このオペラにおける銀のばらは、「時」のアレゴリーであるという研究がありました。

www.classicajapan.com

 

 

 

また、明日海りおさん主演の『ポーの一族』は漫画を原作としていました。

その漫画のシリーズの中には、『メリーベルと銀のばら』というタイトルの作品が。

ja.wikipedia.org

 

 

そして、彩吹真央さん主演の『シルバー・ローズ・クロニクル』という作品もありましたね。

archive.kageki.hankyu.co.jp

 

 

 

 

次に酒井先生の新作レヴューが上演される際には、主題歌に「銀の薔薇」が登場するのかをチェックしたいと思います✨

 

 

 

 

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シャーロットに見る、19世紀英国レディの生活

こんばんは🌸

 

本日スカイステージにて、『A Fairy Tale-青い薔薇の精-』が放送されましたね!

 

 

今回はこのお芝居より、華さん演じるヒロイン・シャーロットに焦点を当て、19世紀ヴィクトリア時代*1の英国レディの生活について深掘りしていきたいと思います!!

 

f:id:Natsu3ichi:20200422212527j:plain

 

(久々に絵を描きました…!)

 

 

 

 

 

階級

まず大前提といたしまして…

イギリスは階級社会と言われますが、それはこのお芝居でも同じ。

物語には様々な階級の人物が登場しますが、彼らがどの階級に属するのかを意識することで、物語の世界がより理解できるようになると思われます。

 

19世紀のヴィクトリア時代は、上流・中流・労働者階級の3つの階級でとらえるのが一般的であるとされます*2

 

それでは、登場人物たちがどの階級に属するのかを確認しましょう。

 

 

 

まず、上流階級についてです。

 

上流階級は、貴族と地主である。土地を貸して得られる収入や金利で、労働せずに生活できるのがたてまえであった。*3

 

シャーロットは貴族の令嬢であるため、この上流階級に属します。

また、紅羽さん演じる彼女の父親(エドモンド)や城妃さん演じる母親(フローレンス)も同じくですね。

 

ただ、貴族の中でも位が存在します。

英国において、貴族は(上から順に)公爵・侯爵・伯爵・子爵・男爵の五つの位に分けられます*4

シャーロットのウィールドン家は子爵であるため、貴族の中でも位は下の方になるでしょう。

 

 

次に、中流階級です。働かなくても生きていける上流階級に対し、中流階級はビジネスで生計を立てている人びとを指します*5

 

柚香さん演じる植物学者のハーヴィーや、瀬戸さん演じるオズワルド・ヴィッカーズ、そしてヴィッカーズ社で働く社員たちがこの階級に当たりますね。

 

 

最後に、労働者階級です。労働者階級はその名のとおり、肉体労働によって対価を受け取る人びとを指します*6

真っ先に農夫などが思い浮かびますが、家事使用人はここに属する*7ため、水美さん演じるウィールドン家の庭師ニックなども、この階級に当たりますね。

 

 

このように『A Fairy Tale』には、様々な階級の人々が登場することが分かります。

ちなみにエリュは妖精なので、階級は関係ないですね…笑

(彼は無差別級なんだ!  by 某ロンドンミュージカルの主人公)

 

 

寄宿学校

ここからは、実際にシャーロットに焦点を当てていきます。

 

 

成長したシャーロットは、寄宿学校に入っていました。

時代は下りますが、とあるイギリス貴族の令嬢が入った寄宿学校は、以下のように説明されています。

 

(前略)1921年、16歳のときに近隣の寄宿学校ハザロップ・カースル・スクールに入学した。これは上流の子女が送られる仕上げ学校(フィニシング・スクール)の一つであった。その名のとおり、社交界に出る直前の伝統的な仕上げ教育をほどこすところで、日本語で「花嫁学校」という訳語があてられる場合もある*8

 

シャーロットは寄宿学校について、「行儀作法や決まりごとがいっぱいあって」と言っています。

彼女も上述の令嬢と同じように、社交界デビューに備えた教育を受けていたのではないでしょうか。

 

 

 

 

薔薇の季節と社交界

物語の中で

 

 「エリュ、あのね、私もう薔薇の季節にこの屋敷に来られないの」

「どうして?」

「来年、社交界デビューしなくてはいけないの。だからこれからは、この季節はロンドンで過ごすことになるんですって」

 

 

 

というやりとりがありましたが、次はここについて詳しく見ていきます。

 

 

 

まず、イギリスにおける「薔薇の季節」とはいつであるのかを確認しましょう。

下記サイトによると、6月初旬~中旬が、イギリスにおいて薔薇の一番の見頃だそうです。

tamipote.com

 

次に、ロンドン社交界について。

少し余談にはなりますが、ヴィクトリア時代後半の上流社交界に出入りする家に生まれついた「良家の令嬢」は、17~18歳で社交界デビューする*9とのことなので、この時のシャーロットは16~17歳であることが推測できます。

 

また、晴れて社交界デビューした暁には、シーズン中はロンドンで過ごすことになります。

 

ヴィクトリア女王時代、春から初夏のロンドンでは、令嬢のデビューのみならず数多くの社交界の催しがあり、上流階級の人々の多くが、こぞって田園の領地から首都に集まった。この期間のことを「ロンドン社交界(シーズン)」と呼ぶ*10

 

シャーロットの場合、シーズン中はウィングフィールドのお屋敷(田舎の領地)を離れ、ロンドンに住むということになりますね。

 

また、社交期が本格的に幕を開けるのは5月の初め*11だそうです。

 

少なくともその時期からロンドンに住むとなると、シャーロットは6月初旬からの「薔薇の季節」にはお屋敷に来られず、したがってエリュとも会うことができないということがよく分かります。

 

 

 

喪服

「お母さまが亡くなった悲しみを忘れたくはないから」と、シャーロットは黒い喪服を着続けていました。

 

誰かを亡くした場合一定期間喪服を着るのも、当時の人々に求められたエチケットの一つでした。

親を亡くした子どもは、その人ごとの感情によって異なりますが、6か月から18か月の間、喪服を着るべきであるとされていました*12

 

真鳳さん演じる後妻のイヴリンに「いつまでその喪服を着ているつもり?」と言われていることから、おそらくそれ以上シャーロットは喪服を着続けていたのでしょう。

 

 

そして、喪服といえば当時のイギリスを治めるヴィクトリア女王

夫のアルバート公が亡くなった後、彼女は死ぬまで喪服を着続けたそうです。

 

 

 

結婚

シャーロットの結婚には、当時の貴族の女性が置かれていた環境がリアルに描かれています。

 

まず、彼女は貴族であるので、実家の資産や土地を受け継げばよいのでは?とお考えになるかもしれません。

ですが、多くの場合は男性のみに継承を認め、長男から順に男系の親族をたどっていくようになっており、女性はふつう継承を認められませんでした*13

つまり、シャーロットは自分の家の土地や財産を引き継げないのです。

そして、おそらくウィールドン家の子供は彼女しかおらず、父親の死後は男系の親族をたどって継承がなされることでしょう。また該当者がいなければ、爵位は消滅してしまうそうです*14

 

 

継承ができないのなら、自分で働いてお金を稼げば?とも考えられます。

しかし社会通念上、貴族の女性には仕事をして自活することが許されなかったそうです*15

 

寄宿学校の同級生たちは彼女について、

「シャーロットって、ちょっと変わっているわね」

「貴族の娘なのに、仕事を持ちたいっていうのよ」

「女性が働いて、自分でお金を稼ぐの?はしたない!」

 

と言っていましたが、残念ながらこのように言われてしまうのも仕方がないのです…。

 

 

 

となると、この先生きていくにはお金持ちと結婚するしかありません。

 

実際、生まれ育ちはよいが目立った財産がない令嬢たちにとって、すでに身についてしまった生活レベルを落とさずに生きるためには、条件の良い結婚のほかにほとんど考えられなかったそうです*16

これは、子爵家に生まれて上流階級の暮らしをしてきたものの、実家には十分な資産がない彼女にも当てはまるでしょう。

 

 

彼女の結婚相手は、羽立さん演じるギルバートという人物です。

彼は十分な資産を持っていますが、実業家ということで中流階級に属する人物です。

 

階級は彼女より下ですが、中流階級の上層には貴族をしのぐ莫大な収入をほこる新興成金もいた*17ようで、もしかしたら彼の資産はウィールドン家よりも上だったかもしれません。

事実、彼女の父親は子爵家の体面を保つだけでも大変だったそうですし。

 

 

 

「それが我々上流社会の常識です、一生贅沢に暮らせるわ」

「あなたが財産のある家に嫁ぐことで、みんなが幸せになるの」

 

これらのイヴリンの台詞には、当時の貴族の令嬢が置かれていた環境が凝縮されているように思われます。

 

 

おわりに

今回の参考文献の中心である

図説 英国貴族の令嬢 (ふくろうの本)

図説 英国貴族の令嬢 (ふくろうの本)

  • 作者:村上 リコ
  • 発売日: 2014/09/25
  • メディア: 単行本
 

 

 

こちらの2冊はとてもお気に入りで、何度も読み返しているのですが、読むたびに「あぁ、19世紀のヨーロッパのお嬢様じゃなくてよかった…」と思います。

 

もちろん、華やかなドレスやお屋敷の暮らしなどには憧れますが、彼女たちの生活には自由など存在しなかったように思われます。

 

そんな中で、「自分の心の感じるまま、信じるままに生きたい」と願い、その生き方を選んだシャーロットの強さを、当時の英国レディの生活を知ることでより感じることができるのではないでしょうか。

 

 

 

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*1:ヴィクトリア女王が統治した、1837年~1901年を指す。

*2:村上リコ『図説 英国貴族の令嬢』河出書房新社、2014年、p.6。

*3:村上(2014)p.6。

*4:村上(2014)p.8。

*5:村上(2014)p.6。

*6:村上(2014)p.6。

*7:村上(2014)p.6。

*8:村上(2014)p.34。

*9:村上リコ『図説 英国社交界ガイド』河出書房新社、2017年、p.11。

*10:村上(2017)p.13。

*11:村上(2017)p.14。

*12:村上(2017)p.117。

*13:村上(2014)p.9。

*14:村上(2014)p.9。

*15:村上(2014)p.67。

*16:村上(2014)pp.66-67。

*17:村上リコ『図説 英国メイドの日常』河出書房新社、2011年、p.9。

AfO リュリのバインダーには何が書かれているのか!?

こんばんは🌙

 

今回取り上げる作品は、月組『All for One』です!

 

f:id:Natsu3ichi:20200429161606j:plain

 

ラブあり冒険ありで、男役さんはかっこよく、娘役さんはかわいらしく。

沢山笑えて、見終わった後はスカっと爽快感があって…

誰もが楽しめる、まさにエンターテイメントという感じの作品ですよね!!

 

また個人的には、各ジェンヌさんへの当て書きが素晴らしいということも、大好きなポイントの一つです。

 

 

さて、劇中には佳城葵さん演じる、バレエ振付師のリュリというお役が登場しておりました。

また、彼が持っていたバインダーが、宝塚歌劇の殿堂に展示されていました。

 

f:id:Natsu3ichi:20200421194917j:plain

  

何やらそこには、フランス語がたくさん…

 

 

 

いったい何が書かれているのか?

気になった私はフランス語の辞書片手に、翻訳を試みました…!

 

 

 

先に感想を言っておきますと、全体的に、筆記体を読むのに苦労いたしました…

あと、やはり私の力不足もあり、かなり意訳が入っておりますことを予めご了承くださいませ<m(__)m>

 (そして確実に間違ってるところがあると思われる…😇)

 

それでは行ってみましょう!!

 

 

f:id:Natsu3ichi:20200421194956p:plain

バレエ(フランス:バレエ 1 2)とは、ヨーロッパにおいて偶然にも流布した、言葉を持たない舞台上のダンスである。

 

初っ端の「gnr?」が分からなくて、いきなり心が折れました…(分からないので飛ばした←)

 あと、()の中も地味に謎ですね。

 

 

f:id:Natsu3ichi:20200421195053p:plain

また、ダンスによって作品が構成される。

 

 

 

f:id:Natsu3ichi:20200421195120p:plain

そして、楽団による演奏や舞台美術を伴った、ダンスによる表現の打ち出しでもある。

 

「tape:肩をたたくこと」のニュアンスをどう出したらいいかが難しかったですね…

(よく分からん…)

 

 

 

f:id:Natsu3ichi:20200421195216p:plain

物語は複数の幕を持ち、そこには沢山のダンスのドラマが存在する。

 

 

 

f:id:Natsu3ichi:20200421195353p:plain

くるみ割り人形白鳥の湖、眠れる森の美女、ドン・キホーテなど)

 

物語バレエの、タイトルの羅列ですね。

(眠れる~を除き、)フランス語ではこのように表されるのだと、とても新鮮でした!

 

 

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しかしながら20世紀以降、物語を否定するような作品も登場する。

 

このような作品はプロットレス・バレエとも呼ばれ、この概念を提唱したジョージ・バランシン(1904-1983)は「現代バレエの父」とされています*1

ja.wikipedia.org

 

 

f:id:Natsu3ichi:20200421195811p:plain

手をキープする

 

手を挙げたままにする振付ってことなのかな?

 

 

 

 

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ルイ14世の周りに…

太陽を崇拝するためのイメージを位置づける。

 

「taler?」が分からなかった。

ここに出てくる太陽は、太陽王ルイ14世ってことですよね、たぶん。

二行目の「D」が何なのかも、最後まで分かりませんでした…

 

 

 

 

いかがでしたでしょうか?!

やはり予想通りですが、バレエについての内容が書かれていましたね。

 

 

 

 

 

 

訳してみて思ったのが、リュリは未来人なのか?!ということです。

 

 

 

といいますのも、「『All for One』の舞台は17世紀である」ということを前提とした上で…

 

 

まず⑥では、20世紀以降のバレエについて触れているじゃないですか。

 

また、⑤で登場するバレエ作品は、いずれも19世紀が初演です*2

 

 

このように、リュリのバインダーには未来のことが書かれているのです…!

 

 

 

おそらく、内容に深い意味はないと思いますが、リュリ未来人説が出てきたのが面白かったので、併せて書いてみました(笑)

 

 

 

宝塚の小道具でもう一つ訳したものがあるので、また紹介しますね~!

 

 

 

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*1:渡辺真弓『名作バレエ50 鑑賞入門』世界文化社、2012年、p.116。

*2:くるみ割り人形:1892年、白鳥の湖:1877年、眠れる森の美女:1890年、ドン・キホーテ:1869年

タカラヅカ・レヴューに求めること。

こんばんは🌸

 

 

今日は私がタカラヅカ・レヴューに求めることについて書きます。

 

もっと詳しく言えば、レヴューを作る時、演出家の先生にはこんなことを意識してほしい!といったところでしょうか。

 

 

それではさっそく行ってみましょう。

 

 

 

(なんとなく今まで撮ったレヴューの写真を並べてみた。)

 

f:id:Natsu3ichi:20200404215119j:plain

 

 

 

 

 

 

 

1.上品であること。

 

宝塚でやるからには、品の良さだけは最低限守っていただきたいです。

これはお芝居・レヴューを通じてなのですが、他のカンパニーと置き換えたらたちまち成り立たなくなってしまうような、宝塚でしかできないような作品が見たいんです。

 

こう思うのも、私は宝塚の独自性に強く惹かれているからなのだなぁ…

 

 

 

2.色使いが美しいこと。

 

どの作品とは言いませんが、(特に衣装の)色使いがごちゃごちゃしていて、見ていて気分があまり良くなかったことが何度かあったので…

 

カラフルだからいい、というわけではないと思います。

 

 

 

 

3.当て書きがなされていること。

 

劇団に座付きの演出家がいるのはなぜか??

それは、スターさんに当て書きをするために他ならないでしょう。

 

「誰がやろうが関係ない!自分はこれがやりたい!!」という演出家の思いが透けて見え、かつそれによってスターさんの魅力が台無しになっていることほど、興ざめなことはありません・・・・・

 

一方、私は「芸術=作者の自己表現」だとも思っていますし、演出家の先生が各自の色を出すからこそ、上演作品のバラエティ性が生まれるとも考えています。

 

演出家の先生の個性と当て書き、このバランスは難しいところです…

 

 

 

4.トップ娘役さんの出番がしっかりあること。

 

たまーに、トップ娘役さんがプロローグのあと中詰めまで出てこないという作品がありますが、見ていてとても悲しくなります…

トップ娘役さんは「主演」娘役なのに!!

 

大体の作品では、中詰めの前に二つシーンがありますが、そのどちらかには必ず出演、そしてどちらかはトップ娘役さんが中心のシーン、というのが理想です。

 

トップ娘役さんがバーンと真ん中を張れることは、作品の充実にもつながるのではないかなと思います。

 

 

 

5.各シーンがきちんとテーマに沿っていること。

 

 

通常、タカラヅカ・レヴューには何らかのテーマがあり、それに関連した場面が次々と展開される構成となっていますが、各シーンは繋がりを持たず、それぞれ独立しています。

 

私はレヴューが持つテーマによって、バラバラな各シーンに一本筋が通るのが溜らなくいいなと感じているので、各シーンはきちんとテーマに沿ってほしいなと思っています。

 

 

また、レヴューのテーマは抽象(愛・希望など)よりかは具体(ワイン・花など)のほうが好きですね。

「なぜこのテーマでこのシーン?」と考え込み、モヤモヤして純粋に作品を楽しめなくなることが少ない気がするので…

 

 

 

 

6.理屈ではなく生理で観客を楽しませること。

 

私の考えたものを例として挙げるのは申し訳ないのですが…

以前、19世紀後半のヨーロッパにおける芸術運動「ジャポニスム」をテーマにレヴューを考えました。

 

natsu3ichi.hatenablog.com

 

 

 

このレヴューでは、日本美術に影響を受けている西洋絵画をモチーフに、各場面を構成しました。

 

私のように美術史をかじった者からすれば、

「あ~!西洋絵画のこんなところに日本美術の影響があるのか~~すごい~~~楽しい~~~~~!!!!!」

 

と理屈で楽しめるのですが(笑)

 

 

美術に興味の無い人からしたら「はぁ?」って感じでしょうし、分からせるために説明を入れ込んでも、レヴューの本質からはかけ離れていってしまうでしょう。

 

またテーマが難解であり、理屈っぽくて理解するのに沢山頭を働かせなければいけないのも、タカラヅカ・レヴューにはふさわしくないと思います。

 

 

 

同じく考えた中で、古代ギリシアの詩の世界をテーマにしたものがあったのですが、

 

natsu3ichi.hatenablog.com

 

こういったような、説明がないと分からない・理解できない・難しいものは、タカラヅカ・レヴューには向いていない題材なのだと思います。

 

 

(そもそも説明があっても難しくて、考えた人も100%理解できていないという…ギリシア哲学おそろしや…😇😇😇)

 

 

『宝塚ショーへの招待』において、荷宮和子さんはタカラヅカ・レヴューについて以下のように説明しています。(ここでは、レヴュー=ショーとします。)

 

 

宝塚ショーの醍醐味は「音楽と踊りを中心に、理屈抜きで観客を単純で心地よい感情にひたらせてくれるもの」と定義できる。

 

宝塚ショーは観客に「楽しかった」と思わせることこそに全てのエネルギーとテクニックを注ぎ込むものである。

 

 

つまり、タカラヅカ・レヴューは理屈以外で観客を楽しませるものであると言えます。

では、理屈以外の何で楽しませるかというと、そこには歌や踊りが関わってくると考えられます。

また、歌と踊りは感覚器官で受け取るものであり、これらに訴えかけて観客を楽しませることは、生理で楽しませることであると言い換えられるでしょう。

 

 

以上より、頭で考えさせる理屈ではなく、歌や音楽で聴覚に、踊り・衣装・色彩・セットなどで視覚に訴え、感覚を通じて生理で観客を楽しませるということが、タカラヅカ・レヴューにおいて重要だと考えられます。

 

そして、生理で観客を楽しませるためには選曲や色彩が特に重要になってくると思いますし、そういった仕掛けが上手く機能しているレヴューは55分があっという間に過ぎ、見終わった後に心から「楽しかった!元気になった!!」と思えるのではないでしょうか。

 

(『BADDY』は生理でも理屈でも楽しめた、稀有なレヴューだったと思います。)

 

 

 

 

おわりに

 

つらつらとわがままに書いてきましたが、レヴューの好みは人それぞれですし、誰もが納得できるレヴューを作ることは不可能でしょう。

 

そんな中で、一番大切なのはやはり「楽しかった!!」と思えるレヴューを作ることなのではないでしょうか。

 

 

それこそがレヴューの持つ働きであり、劇団がレビューに求めていることでもあると思うので。

(お芝居→レヴューの順で上演されるのは、観客に明るく前向きな気持ちで帰路についてほしいという劇団のメッセージなのではないかなと思っています。)

 

 (まぁ私は、パレードでスターさんが笑顔で階段を降りてくるだけで「楽しかった~~~」と思う、チョロいファンなのですが)

 

 

 

最後に、岡田敬二先生作詞の「アイ・ラブ・レビュー」より、私の大好きな歌詞の一部を紹介します。

 

「全ての夢を集め 明日のため力与える」

「つかの間の安らぎ 愛と夢にみち」

 

 

 

誰もが安心して楽しめて、見終わった後に元気をもらえる…

 

この歌詞に、タカラヅカ・レヴューの持つ力が集約されていると感じます。

 

 

いつの日かまた、笑顔でレヴューを楽しめる日が必ず来ると信じて。

 

 

 

 

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ステージスタジオを攻略せよ!(体験と感想)

こんばんは🌟

 

昨日の「マツコ会議」にて、宝塚大劇場内にあるステージスタジオが特集されましたね~!!

 

www.ntv.co.jp

 

 

 

 

また、スカイステージの「ときめきタカラヅカSTYLE」#6でも七海さんが扮装に挑戦していたり、

 

www.tca-pictures.net

 

 

友達と「行きたいね~」なんて話していたりと、なんだか最近触れる機会が多い気がするので、今回はこのステージスタジオについて書いていきたいと思います~!!

 

 

 

 

 

何を隠そう、私はこのステージスタジオが大好きで…

2017年から毎年行っているほどです(笑)

最初に行ったのはちょうど20歳になった日で、凄く思い出に残る誕生日となりました🍰

 

(今年は友達と卒業記念に行きたかったのですが、今はこんな状況なので、また落ち着いたら二人で行きたいなぁと思っています。)

 

 

 

(以下、ヅカメイクで顔が激変しているので、写真載せます)

 

今までに着たお衣装はこちら!!

 

f:id:Natsu3ichi:20200315180658j:plain



 

 

 

特に好きなのは、やはり『1789』のアントワネットのドレスですね💕

 

私はステージスタジオの衣装一覧のページ

kageki.hankyu.co.jp

 

にたどり着き、

「1789?のマリー・アントワネットのドレス、めちゃくちゃかわいい!!!!!!!」

 

と思って宝塚にはまったという、なんとも意味が分からない経歴を持っているので、実際に着れたときの喜びや感動は、言い表せないものがありましたね。

 

(好きすぎて二回着てます…(笑))

 

 

 

また、自分のパーソナルカラーがブルべ夏だということもあるかもしれませんが、『エリザベート』の戴冠式の紺色のドレスは、すごく顔なじみが良くてしっくり来た覚えがあります。

 

あと、『風と共に去りぬ』のスカーレットの白いティアードドレスは、着た瞬間「(ドレスが)かわいい!!」の声が止まりませんでした。

 

 

 

 

 

 

次に、何回か体験してみて思ったことをまとめます。

 

 

①迷ったらスタッフさんのアドバイスを聞く!!

背景や小道具、ポーズや商品にする写真のカットなど、体験中には何度も選択に迫られる場面があります。

 

「絶対このポーズがいい!」「絶対シャンシャンを持つ!」といった断固たる意志がある場合は別ですが、そうでない場合はスタッフさんにアドバイスを求めるのがよきです。

 

客観的な視点で、見栄えよく美しいものを薦めて下さいますよ~!

 

 

 

②体験には誰かを連れていく!!

スタッフの方がめちゃくちゃ話しかけたりほめてくださったりするので、もちろん一人での体験でも十分楽しめます。(自己肯定感MAXになりました)

 

ですが、友人が付き添ってくれた時は、一人の時よりもさらに楽しかったです~

(盛り上げてくれて、ありがたい友達だった…)

 

あと私の場合、一人だとスタッフさんに話しかけまくってしまったので←、すごく申し訳なかったです(反省)

 

 

メイク中や着替え中はNGですが、撮影風景は見学ができるので、友人や家族などを連れて行くのが、テンションアップのためにもよいかと思われます(笑)

 

(そしてヅカヲタのみなさま、もし付き添いをお願いされたら、ぜひぜひ行ってあげてくださいませ~)

 

 

 

③スターさんとのツーショットを作ろう!!

撮ったお写真は様々な商品にできますが、一番おすすめなのは、スターさんとのツーショットです✨

 

f:id:Natsu3ichi:20200315184110j:plain

僭越ながら、世紀の色男さまとのツーショット♡

(このお写真、自分史上最高に綺麗に撮ってもらえているので、マジで遺影にしたい…)

 

隣に来るスチール写真は、最新の大劇場公演とその一個前の公演のものから選べました。

2020年3月時点で言えば、月組さんは『I AM FROM AUSTRIA』と『クルンテープ』のものから選べるといった感じです。

 

 

また、ジェンヌさんが卒業された日以降は、その方とのツーショットが作れなくなってしまうので、注意が必要です💦

美弥さんの場合だと2019年6月9日ご卒業だったので、慌ててそれまでに作りに行った思い出があります。

 

 

そして、お衣装とタイミングが合えば、まるでお相手役を務めている()かのような写真も作ることができます~!!

 

f:id:Natsu3ichi:20200315184824j:plain

 

 

ちょうど月組で『エリザベート』が上演されたので、シシィのお衣装で美弥フランツ様とツーショットを作りました⭐

このために、二回目の鏡の間のドレスを着ました←

(めちゃくちゃすれ違い夫婦な感じになってしまった…)

 

 

 

 

 

 

複数人での撮影は経験したことがないので、今度はロミオとジュリエットやパレードのコンビなど、対になるものをやってみたいなと目論んでおります。

 

 

 

 

 

もう本当に夢心地で、楽しくて、胸の高鳴りが止まらなくて…

胸を張ってお勧めできる、素晴らしい体験です❤

特にお衣装好きな方なら、テンション爆上がりだと思います。

 

コロナウィルスの影響により、残念ながら現在は営業しておりませんが、再開されたらぜひぜひ体験をご検討くださいませ~!!!!!!!!!

 

 

 

ああ、書いていたらまた行きたくなってきた…(禁断症状)

 

 

 

 

 

 

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