『シトラスの風』と映画
こんばんは🍋
今回取り上げるのは、私の大好きなレヴュー『シトラスの風』です✨
初演・Ⅱ・Ⅲ・Sunriseと、今までに四度上演されているこの作品。
華やかで心躍るシーンが様々繰り広げられますが、その中には映画に影響を受けているシーンが数多くあります。
そこで今回は「『シトラスの風』と映画」と題し、このことについて語っていきたいと思います🎦
岡田先生と映画
『シトラスの風』の内容について触れる前に、作者の岡田敬二先生について少し確認しておきましょう。
ロマンチック・レビューシリーズを提唱し、「日本レヴュー界の第一人者」とも称される先生ですが、学生時代の夢は映画監督になることだったそうです。
大学は早稲田大学の文学部でしたが、映画研究会に所属して、映画監督になる準備をしたいなと思って、毎日のように勉強よりも映画を見続けるような大学生活でした*1。
学生時代のこのエピソードを読めば、先生の作品には映画の影響が多くみられるということも納得ですね!!
ステート・フェアー
ここからは、実際に作品の内容について触れていきます。
まずは、「ステート・フェアー」のシーンから🎪
このシーンはもともと、先生の作品である『ラ・カンタータ!』*2の一場面であったのですが、凰稀かなめさん主演で再演された際にこの作品に組み込まれ、その後ⅢやSunriseにも受け継がれました。
また何といってもこのシーンは、私が宝塚の中で一番好きなシーンなのです❤
フリルいっぱいのお衣装で着飾った娘役さんたちや、甘くかわいらしいラブストーリー、そしてどこかノスタルジックで、心をくすぐるような雰囲気…
映像で何度見返したか分からないほど、本当に大好きなシーンです。
さて、このシーンについて岡田先生は、以下のように語っておられます。
ジュディ・ガーランドという、映画「オズの魔法使い」などで主役をしていた伝説のミュージカル女優の雰囲気で、トロリーのセット前に真っ白な衣装の星風が出てくる*3。
ここで言及されたジュディ・ガーランドは、昨年伝記映画が公開されるなど、日本でも有名なハリウッド女優ですよね。
また、「カンカントロリー乗り~♪」というかわいらしい歌詞が印象に残る、「The Trolley Song」という曲は、
このジュディ・ガーランド主演の映画『若草の頃』の曲なのです!!
MEET ME IN ST. LOUIS ('44): "The Trolley Song"
この映画の舞台である、20世紀初頭のアメリカの古き良き雰囲気が、舞台でもよく伝わってきますよね~💕
また、このシーンのお衣装にそっくりなものが、映画の中にも登場します。
Meet Me in St. Louis Ending Scene - Judy Garland
あと、赤いリボンでウェストマークしている点や、パラソルを持っている点は、映画『メリー・ポピンズ』の影響かなぁと思っています。
さて、このシーンはストーリー仕立てとなっており、ステート・フェアーに来たフレッドとアグネスが突然の雷雨にみまわれ、雨宿りを通じて恋に落ちるという展開になっています。
幻想的な雰囲気の中での、二人の雨宿りデュエットダンス。
ここで使われている「A Fine Romance」は、
フレッド・アステア主演の『有頂天時代』で使われた曲です。
また、ここのデュエットダンスは、同じくアステア主演の『バンド・ワゴン』に登場するダンスシーンのオマージュになっているみたいです。
Band Wagon - Dancing In The Dark de MGM Studio
このシーンは、映画『ラ・ラ・ランド』にもオマージュとして登場したとのことです。
またこれらの映画から、このシーンに登場する役名がなぜ「フレッド」であるのかが、よく分かるようになっていますね。
間奏曲「Paradiso」
Sunriseでは「ステート・フェアー」の後の間奏曲に、「Paradiso」という曲が使われました。
この曲はもともと先生の作品である『ダンディズム!』*4で登場した後、その続編である『ネオ・ダンディズム!-男の美学-』*5、そしてSunriseにも引き継がれました。
この曲を歌った芹香さんのお衣装は、湖月さんのものを踏襲していますね~🐉
個人的に、チャイナ服+ソフト帽という一見合わなさそうだけれど、実際合わせてみたら死ぬほどかっこいいという組み合わせを考えられた方は、まさに天才だと思っております…!!!!!
いやはや、このシーンで大人の色気を放出しまくっていた芹香さんは、大変危険な存在でございました。。。
そしてこの曲は、映画『疵』の主題歌だそうです。
間奏曲「Smile」
ⅡとⅢで間奏曲として使われていたのが、「Smile」という曲。
これは、チャップリン主演の映画『モダン・タイムス』のテーマ曲だそうです。
間奏曲「I Won't Dance」
初演の間奏曲として、和央ようかさんが歌ったのが「I Won't Dance」という曲。
これは、映画『ロバータ』の曲だそうです。
(またまたフレッド・アステア。)
「アマポーラ」
Sunriseで新しく作られた中詰めのシーン、「アマポーラ」。
ここで使われている「Amapola」は、
なんと、映画『Once Upon a Time in America』に使われていた曲だそうです❄
思わぬところでタカラヅカとの関連を発見し、とても驚きました!!!
余談になりますが、アマポーラはスペイン語でひなげしの意だそうです。
ノスタルジア
美しいオペラの曲に酔いしれる、ストーリー仕立てのこのシーン。
岡田先生は着想について、以下のように語っておられます。
イタリアの監督のルキノ・ヴィスコンティの「夏の嵐」や「山猫」を意識した、イタリア貴族の三角関係の場面を作りました*6。
…というわけで、このシーンにはこの二つの映画の影響があるのは、間違いなさそうですね!!
『山猫』の予告編を見る限りでは、ヒロインの女性のセンター分けの前髪や白いドレス、そして軍服とドレスが入り混じった華やかな舞踏会といった点に、確かに影響を感じますね!!
またまた余談になりますが、植田景子先生の『落陽のパレルモ』も、同じく『山猫』の設定に似たモチーフを使っているそうです*7。
確かに、ふづきさんのお衣装・髪形など、似たところがあるような気がします。
(この作品、ふづきさんのお衣装がどれも素敵だったなぁ…)
誕生
「誕生」は、初演にのみ存在したシーンです。
このシーンについて、演劇コラムニストの石井啓夫氏は「時代、人間、文明批判をチャップリン映画を髣髴させるように構成。*8」と語っておられます。
では一体、「誕生」のどのあたりが、チャップリン映画を想起させるのでしょうか?
それは、このシーンのセットやメッセージ性にあると考えられます。
シーンの前半は、以下のように説明されます。
メカニックな歯車などの中に、トンボ、蝶などが組み込まれているセット。仮面をつけた男女が人間疎外、断絶感を踊る(後略)*9。
確かにこのシーンでは、歯車のセットが印象的だったことをよく覚えています。
そして、前述の「Smile」が使われていたチャップリンの『モダン・タイムス』は、歯車のシーンが有名ですよね。
また『モダン・タイムス』の内容として、
資本主義社会や機械文明を題材に取った作品で、労働者の個人の尊厳が失われ、機械の一部分のようになっている世の中を笑いで表現している。*10
ということが挙げられますが、そのチャップリンが歯車に巻き込まれるシーンによって、上述のことが示されていると考えられます。
そして、「誕生」のシーンで歌われる「自然に生きよう」
の歌詞の一部を紹介しますと…
「アスファルトが私たちの魂を毒し 醜い欲望と憎悪が燃え上がり 私たちを悲惨と流血に追い立てる」
「スピードは私たち自身を閉じ込め 機械は私たちに物足りなさを植えつけた」
「知識は私たちを皮肉屋に仕立て 私たちの賢さは冷血漢を作った」
「私たちはあまりにも多くを知りすぎ、あまりにも感じることが少なすぎる」
「空気はますますけがされ 緑の大地は削られ茶色の身をさらし」
「国境は私たちに不信と疑惑を芽生えさせ 教育は私たちに偏見と断絶を与えた」
このような歌詞より、「誕生」のシーンには機械化や近代化を批判するような、強いメッセージ性が感じられます。
以上より、メカニック(=機械的な)歯車や、機械文明や近代化を批判するような歌詞のメッセージ性が、「誕生」においてチャップリン映画、そしておそらくは『モダン・タイムス』を髣髴とさせるのではないでしょうか。
おわりに
今回は 『シトラスの風』における映画の影響をたくさん見てきましたが、調べてみて、岡田先生は本当に映画を愛していらっしゃるのだなと感じました。
GW中は、元ネタになった映画を見ることにも挑戦したいな~と思っています🌟
また、岡田先生の長男であるテレビ演出家の岡田倫太郎氏は、Sunriseについて自身のブログに詳しく書いておられます。
この記事を書くにあたり、分からない箇所をいくつか参照させていただきました。
映画との関連以外にもいろいろ触れておられますので、ぜひぜひご覧くださいませ。
作品に使われている原曲を調べる際、いつもお世話になっているサイトです⇓
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