深掘り*タカラヅカ

男役イメージの研究で修士号を取得した筆者が、宝塚をあれこれマニアックに深掘りします。

柚香光さんのスカート姿―男役イメージは変化するか?【オフにおける男役イメージの変遷⑭】

 

オフのファッションに注目し、男役イメージの変遷について論じてきた本シリーズも、いよいよ最終回となりました👏👏

 

今までのおさらいはこちらからどうぞ👇

natsu3ichi.hatenablog.com

 

 

⋆ちょうど一年前に、元になった修士論文を提出したところでした。

 

 

今回は全ヅカヲタに衝撃が走った、『宝塚GRAPH』2022年1月号のあのポートレートの話をします。

(もう一年も前の号なんですよね…😅)

 

 

 

 

 

 

現代における男役ファッションの硬直性

このシリーズでは、劇団創設時から現在までの男役ファッションの変遷について、13回かけて詳しく見てきました。

特に戦後では、ミニスカートやパンタロンといった流行アイテムを取り入れて、年単位で目まぐるしく変化が起きていましたよね。

 

しかし21世紀に入ると、男役はスカートを頑なに着用しなくなるなど、現代の男役ファッションは硬直していると言わざるを得ないでしょう。

 

 

 

しかし注目すべきことに、2021年12月20日、そこに一石を投じるような出来事が起きました。

同日発売の『宝塚GRAPH』1月号のポートレートにおいて柚香光さんが、長年タブーとされてきたスカートを着用したのです…!!!!!!!!!

 

 

 

柚香さんのスカート姿が意味するところ

柚香さんのスカート姿…

この事例は、長い年月を経て確立されたオフの男役イメージの幅が、再び広げられようとしている試みであると考えられます。

したがってこのポートレートは変化の始まりを予感させるような、歴史を刻む新たな一枚となったと言えるでしょう。

 

 

皆さま、紙面を開いたときはたいそう驚かれたのではないでしょうか。

私ももちろんそうでしたし、修士論文を書いている途中にこのような歴史的瞬間に立ち会えて、胸が震えました。

 

 

 

ジェンダーレスファッションと男役イメージ

また現代はファッションにおいて、ジェンダーレスが話題となる時代でもあります。

よって柚香さんのスカート姿は、男役にもそのような新しい流れが入ってくる兆しであるとも捉えられるでしょう。

 

 

しかし、思い出してみてください。

従来の男役イメージというのは、「パンツスタイル=男」といった、衣服が持つ性差の記号を利用して作られるものでした。

 

性差の記号があいまいとなるジェンダーレスなファッションを取り入れることによって、今後男役イメージも変化していくのでしょうか。

それとも、現在確立したような男役イメージをこの先も続けていくのでしょうか。

 

 

 

 

 

以上、私の修士論文宝塚歌劇における男役イメージの変遷――オフステージのファッションを中心に』に基づいたシリーズ記事をご覧頂き、本当にありがとうございました!!!

 

 

大変有り難いことに、読みたいとのお声を頂戴しまして、書き上げるモチベーションとなりました。

やはり研究というのは自己完結ではなく、受け手がいてこそ(=社会ありき、すなわち社会に必要とされているという研究の意義)ですので、このような形で世に出すことができてよかったです。

 

 

それと、やっぱり宝塚はエンタメとしてだけでなく、研究対象としても面白いなぁと思いました。

ただ宝塚が好きという気持ちだけで研究を始めて院進までしてしまった無鉄砲学生でしたので、研究にどう対峙していいのか分からず在学中はずっと泣いていました。

ですが、宝塚を好きという気持ちを大切にし、宝塚に関する論文を書くことによって、「宝塚はどうでもよくなんかないよ、宝塚は価値がある存在なんだよ」ということを少しでも証明できたかなと思います。