ついに定着!男役のパンツスタイル(1970s)【オフにおける男役イメージの変遷⑧】
こんばんは★
今回はついに男役の間でパンツスタイルが定着する、1970年代について書きますよ~👖👖👖👖👖
ここまでにシリーズ7回、劇団誕生からは60年ほどかかりましたね…
はぁはぁ、長かった……
「それまで男役はパンツ着用してなかったん?」っていう話は前回してます👇
パンタロンとイヴ・サンローラン
1970年代に男役の間でパンツが定着したのは、世間で「パンタロン」というアイテムが流行し定着したことの影響があると考えられます。
まずは女性服のおしゃれ着における、パンツの萌芽や流行について確認しましょう🤩
女性のパンツスタイル定着に重要な役割を果たすのが、フランス人デザイナーのイヴ・サンローランです👓
こちらの左は、彼が発表した《シティ・パンツ》という作品です。
この「シティ」という単語が示すように、彼はパンタロンを街着用にデザインして発表した*1そうです。
つまり彼がこの年に発表したパンツは、街の中でも着用可能な”日常的なおしゃれ着としてのパンツ”とも言えますね🌃
パンタロン@日本
実際に1968年頃からは、一部の女性に着用され始めたそう*2。
⑦でも確認したように、パンタロンの登場以前にも女性服の中にパンツはありました。しかしそれは実用着であり、おしゃれ着ではありませんでした🙅♀️
しかしこのパンタロンは、れっきとしたおしゃれ着です✨
このようなパンタロンというアイテムが登場し、日本の世間でも着用されるようになったことによって、オフのポートレートにおいても男役がパンツを着用できるようになったと考えられます。
ついに男役も堂々とオシャレしてパンツを履けますよ💞
やったー🙌🙌🙌🙌🙌
すぐに取り入れられなかったパンタロン
ですが、1968年の『宝塚グラフ』を開いてみると…
当時最新のアイテムだったパンタロン、見つかったのは数ページのみ😳
なんで~????🥺
その理由を明らかにすべく、数少ない男役のパンタロン・ポートをサーチしましょう🔍
例として挙げるのが、グラフ1968年9月号の、古城都さんのポートレート🍁
この写真に付けられたキャプションには、こう書いてありました📝
8月は『ウェストサイド物語』にすべてをかけたミヤコ(古城さんの愛称)が珍しくおめかしをしました*3。
このように、当時パンタロンは「おめかしをして」着用するようなおしゃれなアイテムであり、決して日常的に着用するような、定着したものではなかったことがうかがえます。
また1968年当時、男役の中心的なボトムスはミニスカートでした👗
⑦で見た通り、男役がやっとミニを取り入れ始めたのが1967年。
1968年というのはその翌年ですから、男役たちがすぐにパンタロンへ乗り換えるということも考えにくいですよね~😗
登場したばかりのパンタロンがミニの影に隠れてしまっているという状況は、世間でも同じだったみたいです。
ファッション革命としてミニスカートがひとたび流行し、普及してしまう1968年ごろになると、人々はボトムは永遠にミニスカートであると思い込むようになるなどしており、このような革命をパンタロンがくつがえせるはずがなかった*4そう。
ミニスカート、かなり強しですね🔥
男役の乙女ゴコロ?
加えて、「オンとオフで同じ格好をしたくない😫」という男役の乙女ゴゴロ?も確認できます。
そんな記事をグラフや歌劇で見つけましたよ~😳
1.「安奈淳とおしゃれ問答」(グラフ1969年8月号)
安奈淳さん×ファッションの記事🩳
「パンタロンスーツは好き?」という質問に対し、安奈さんはこう答えておられます。
またパンタロンからは少し逸れますが、ジーンズの着用に関して当時の「えと文」には、このようなエピソードが👖
(なんと、「えと文」は1960年代からあった!)
2.葵悠香さん「心の散歩」(歌劇1968年10月号)
月組の旅行で鳴門のうず潮見物に出かけました。皆思い思いの服装で。(中略)
その中で、可愛らしい(スイマセン)フリフリのワンピースのスピッツさん(八重(筆者注:八重はるみさん、スピッツは彼女の愛称))「ワァ、かわいらしい服ですね。」と云う私に、「そうやねン、今日よっぽどGパンはいてこよ思ったんだけど、昨日まで舞台ではいてて、又、今日はいて来たら、舞台の続きみたいだからやめてンよ」とか。その為かしら、ずーっと見渡しても、男役の人でGパンをはいている人は一人も居なかった*6。
以上より、「わざわざオフにまでオンと同じようにパンツを着用したり、男らしいファッションをしたりしたくない」という、男役の絶妙な乙女ゴコロ?が確認できますね~😌💝
パンタロン・ブームがやってきた!
1970年代に入ると日本でもパンタロン・ブームが起こり、女性のパンツスタイルが世間に定着します💥💥
1970年秋からマーケットサイズが大きくなりはじめ、(中略)71年の秋冬シーズンには、流行商品の花形としてクローズアップされてゆく。
1972年には夏にもパンタロンが受け入れられ、この年の秋冬から73年秋冬までに爆発的な大流行となり、ヤングからアダルトまで、およそすべての女性がパンタロンをファッションとして受容したのであった*7。
ここで、1970年~1973年のグラフにおいて男役がどのようなボトムスを着用しているか、実際に確認を行いました📚
ざ〜っと見てみたところ、1972年の上半期までは、パンタロンの他にミニスカートやロングスカートを履いている男役も多かったのですが、72年の下半期にはついに、パンタロンが男役の中心的なボトムスに躍り出ることとなります😆😆😆
このように男役がパンタロンを取り入れる流れは、世間の流れと大体重なります。
⑧のミニスカートで見たように、世間での定着がなされた頃合いに流行アイテムを取り入れるというのが、やはりタカラジェンヌの姿勢なのでしょうね。
(男役は、決して時代の最先端を行くような存在ではなかった!というのがミソです)
サンローランのデザイン理念と男役イメージ
以上のような流れでパンタロンを取り入れ、男役の間でパンツスタイルが定着しました。
よって、ここに来てやっと男役は、「オンとオフに連続性があるイメージ」を作ることができるようになりました~‼‼‼‼‼‼‼‼(ドンドンパフパフ)
ところで、このようなイメージ形成が成しえたのは、流行・定着したのがサンローランのパンタロンだったからこそであると考えられます。
以下、少し頭がウニウニになってしまうかもしれませんが、私の考察にお付き合いくださいませ~💦
まずサンローランは、男性ファッションをいかにして女性の服装に取り入れるかということを常に考え、模索していた*8そう。
つまり彼が発表したパンタロンは、「女性服+男性性」というアイテムであるとも言い換えられますが、あくまでもベースは女性服であるという点が重要です。
一方、オンにおける男役のジェンダー・パフォーマンスの方法は、元来の女性の身体に男性的特徴を身につけるものであるとされています*9。
これは言うなれば、「女性の身体+男性性」という方法であるとも表現できるでしょう。
よってパンタロンというアイテムが、オフにおいても男役イメージを形成できることに寄与したのは、以下の二点が理由であると考えられます。
一点目は、あくまでも女性服であって、女性の身体を否定せず着用できるという点。
二点目は、身に纏うことで女性の身体に男性性を付与できますが、この「女性の身体+男性性」という構図は、オンにおける男役のパフォーマンスを獲得する方法に通じるものであり、オンと重なる方法でオフでもイメージ形成を行うということが可能になったと考えられる点です。
もし仮に、男役たちが自らの持つ女性の身体を否定し、男性服を男性服のまま取り入れるという方法では、オンとオフに連続性を持つイメージ形成という転換は、このようには成しえなかったのではないでしょうか。
※イヴ・サンローランとパンタロンについてもっと詳しく知りたい方は、菊田琢也さんの論文
『【68年5月/ファッション】:女性にパンタロンを:イヴ・サンローランと1968年』
がおすすめです🌟
ネット上で全文読めます📖👇
男役の間でパンツスタイルが定着し、オフでもかっこいいという男役イメージの出来上がり!
これにて変遷をたどる旅は終了★
めでたしめでたし~😊😊😊
と・思・い・き・や!
パンツスタイルの定着という出来事は、オフにおける男役イメージが「確立」する契機とまでにはなりませんでした。
え、じゃあどんなことがきっかけで男役イメージが「確立」したの~😫???
というわけで、次回からは1980年代に突入。
男役イメージの「確立」を、3つの観点から見ていきます🤗
乞うご期待🌠
⑨はこちらから⇩
読んで下さってありがとうございます🎩🌟
ブログ村に参加しています。
応援ポチを頂けると、とても嬉しいです💕
更新の励みになります💪
*1:日置久子『女性の服飾文化史―新しい美と機能性を求めて』西村書店、2006年、p.336
*2:日置、前掲書、p.336
*3: 「おしゃれな妖精」『宝塚グラフ』1968年9月号、宝塚歌劇団出版部、p.5
*4:千村典生『増補 戦後ファッションストーリー 1945-2000』平凡社、2001年、pp.196-197
*5:「安奈淳とおしゃれ問答」『宝塚グラフ』1969年8月号、宝塚歌劇団出版部、p.52
*6:葵悠香「心の散歩」『歌劇』1968年10月号、宝塚歌劇団出版部、p.68
*7:千村典生『増補 戦後ファッションストーリー 1945-2000』平凡社、2001年、p.257
*8:キャリー・ブラックマン『ウィメンズウェア100年史』桜井真砂美訳、トゥーバージンズ、2020年、p.235
*9:ジェニファー・ロバートソン『踊る帝国主義―宝塚をめぐるセクシュアル・ポリティックスと大衆文化―』堀千恵子訳、現代書館、2000年、pp.127-128