深掘り*タカラヅカ

男役イメージの研究で修士号を取得した筆者が、宝塚をあれこれマニアックに深掘りします。

トップコンビ制の確立♥オフでも男役を演じ始めた男役たち(1980s~Ⅰ)【オフにおける男役イメージの変遷⑨】

 

 

ご無沙汰しております💦

 

GW、皆さまいかがお過ごしでしょうか?

公演中止に胸が痛みますね…

 

 

 

前回の⑧では、男役の間でついにパンツスタイルが定着し、めでたしめでたし~👏👏👏👏👏

natsu3ichi.hatenablog.com

 

 

というところだったのですが、

実はオフにおいても男役イメージが「確立」したのは、1980年代に入ってからであると考えられます。

その経緯を、三つの観点から見ていきます~!

 

 

今回は、「男役がオフの姿でも男役を演じるポートレート」に注目します📚

そこには当時定められた、みんな大好きトップコンビ制が深く関わってきますよ~♥

 

 

 

 

 

 

パンツスタイルは定着したけれど…

80年代に入る前に、パンタロン流行後の男役ファッションについて確認します。

 

 

⑧で確認したように、70年代のパンタロン・ブームをきっかけに、男役においてもパンツスタイルが定着しました。

 

そして男役は確かに、オフにおいても男役イメージを作ることが可能になりました。

 

 

 

しかしパンタロン・ブームは、オフにおいて男役イメージが「確立」する契機とまでには行きませんでした。

実際のところ、男役たちのワードローヴからスカートが消え去ったわけではなかったのです😳

 

 

試しに、パンタロン流行後の1975年の『宝塚グラフ』を見てみると…

あら、安奈淳さんがミモレ丈の爽やかなスカートをお召しでしてよ?

 

さらに2年後、1977年のグラフ。

あらあら、鳳蘭さんもステキなロングのワンピース姿。

 

このように、一度は消え去ったかと思った、男役のスカート姿が復活してきてますよ…?

 

つまり1970年代前半において男役のパンツスタイルが定着するものの、男役はみなスカートを捨て去ったわけではないことが分かります。

 

パンツもスカートも両方楽しむという、男役ファッションの自由さが伺えますね👖👗

 

 

 

80年代:トップコンビ確立の時代♥

さて、時は1980年代に突入。

この時代になるとグラフには、「男役がオフの姿でも男役を演じる」というポートが登場してきます。

 

それに深く関わってくるのが、トップコンビ制度の確立です♥

 

今でこそ当たり前のように思われるトップコンビ制度ですが、各組にトップコンビが意図的に創出され常設化されるようになったのは、1980年代のことだそうです*1

 

当時有名なトップコンビといえば、雪組麻実れいさん・遥くららさんコンビや、月組大地真央さん・黒木瞳さんコンビが挙げられますね💞

 

 

 

 

雑誌に登場するトップコンビ

そしてこのトップコンビが、雑誌のポートにも取り上げられます!

もちろん、舞台化粧をして衣装を着けたオンの姿のポートもあるのですが、注目したいのは素化粧でのオフのポート。

 

1982年のグラフ1月号には、当時の各組のトップコンビが登場した、そのようなポートが掲載されていました~!!

 

ターコさんの表紙がステキな『宝塚グラフ』1982年1月号



 

 

しかも皆さまのポーズはオンでの絡みと同じように、手を取り合ったり寄り添ったりしたものですよ😌💖

はぁ…ときめきが止まらん……

 

 

 

 

このようなポートレートは、舞台上で愛し合っているトップコンビのイメージを、オフにもそのまま投影しているものであると言えるでしょう。

 

よってファッションに関しても舞台上と同じく、男役:パンツ/娘役:スカートというコードに則ったファッションがなされていると考えられます。

 

実際にトップスターは皆さまパンツスタイルで、トップスもブラウスにベストであったり、シャツにネクタイであったりと、男役のイメージに沿ったものを概ね着用されていました。

 

 

また、もしこのようなポートで男役がスカートを着用していたら、舞台上のイメージや関係性を投影することは難しくなるでしょう。

(女の子同士?みたいになっちゃうもんね…)

 

 

 

トップコンビでなくとも…

また時代が進むにつれ、トップコンビという特定の間柄でなくとも、男役/娘役が舞台上の役割を果たすというポートも登場してきます。

 

 

その最たるものは、男役と娘役がデートをするという設定のものでしょう。

 

例えば『宝塚グラフ』1990年2月号~12月号には、各組の男役スターと娘役スターがデートをするというシチュエーションでのポートレート特集が掲載されていました💝

 

スターの組み合わせの一覧👇

ikedabunko.opac.jp

 

 

その中から、11月号の「YAN♥SHIGI Dating in November」をチェックします🔍

この回は、花組安寿ミラさん(愛称:ヤン)と、星組のトップ娘役・毬藻えりさん(愛称:シギ)というカップルでした。

 

 

4カットの写真の内容としては、

①二人の待ち合わせの様子。安寿さんは毬藻さんに花束を渡します💐

②ビリヤードに興じる安寿さんと、それを見守る毬藻さん。

③お酒の席で仲睦まじく語りあう二人。

④二人が恋人のように組んだポートレート

というものです。

 

このようなデートの一連というシチュエーションが成り立つのは、まさに男役がオフにおいても男役イメージを作り、男役を演じているからこそでしょう。

 

 

また、花束を渡すヤンさんがガチ恋レベルでかっこよくて「ひーーーー😇😇😇」ってなるのですが、こんな風に読者がときめけるという点で、男役が疑似恋人と化していることも注目できますね。

 

 

 

もはや「変態」ではない

以上のように1980年代以降はトップコンビ制の確立によって、舞台上と同じく男役/娘役の役割が果されることを狙った企画が紙面においても登場し、男役がオフの姿でもオンと同じく男役を演じるようになりました。

そしてこれにともない、男役イメージにおけるオンとオフの連続性が強くなっていったと考えられます。

 

 

 

また裏を返せばこれは、男役がオフでも男役を演じ、娘役との恋愛関係を表現していてもオッケーになったという可能性も読み取れます。

 

 

⑤で触れましたが、戦前の男役は「変態」とみなされないように、オフに男らしく振る舞うことを禁止されていました。

natsu3ichi.hatenablog.com

 

しかしこのようなポートは、そのようなことをしていても「変態」とはみなされなくなったことの現れであるとも言えるかもしれません。

 

 

 

 

 

※トップコンビ制度の移り変わりについてもっと詳しく知りたい!という方は、中本千晶さんの以下の二冊がおすすめです。

 

研究書ではなく一般書ですし、サクッと楽しく読めるかと思います💓

 

 

 

 

 

 

次回は第二の視点★

オフもストイックに男役芸を磨く男役たちの姿勢に迫ります~💎

 

⑩はこちらから👇

natsu3ichi.hatenablog.com

 

 

 

 

 

読んで下さってありがとうございます🎩🌟

 

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*1:中本千晶『なぜ宝塚歌劇の男役はカッコイイのか』東京堂出版、2011 年、p.168