スタイルと補色、『ファントム』エリックのお衣装あれこれ。
明けましておめでとうございます🌅
今年も本ブログを、どうぞよろしくお願い致します。
新年一発目の今回は、ちょうどスカステで放送されるということで、『ファントム』を取り上げます✨
いや、2018年の公演は、望海さん・まあやちゃんの歌声が本当に素晴らしくてですね…
月組以外のBlu-rayは基本的に買わない、としていたのですが、あまりの完成度の高さに、この公演は思わずBlu-rayを買ってしまいました。
今回はその中でも、主人公であるエリックのお衣装について、①衣装のスタイル ②補色という、二つの観点から書いていきたいと思います。
①衣装のスタイルから見る、エリックの異様さ
まず、エリックのお衣装のスタイルについて。
劇中でエリックは様々なお衣装を着ますが、特に印象的なのは、ポスターにも登場し、メインビジュアルにもなっている紺のお衣装でしょうか。
このお衣装は、コート(ロング丈の上着)・ウエストコート(ベスト)というパーツから、18世紀中頃のフランスの、男性の宮廷服スタイルが原型であると思われます。
(例)https://www.kci.or.jp/archives/digital_archives/1700s_1750s/KCI_008
…ところで、『ファントム』の舞台は、一体いつごろなのでしょうか?
それを解き明かすために、次はクリスティーヌのお衣装に注目します。
《パリのメロディー》が歌われる時のお衣装をはじめとして、クリスティーヌのお衣装は、お尻の部分が後ろにぽこんと膨らむ、バッスル・スタイルが中心です。
(例)https://www.kci.or.jp/archives/digital_archives/1870s_1880s/KCI_105
このスカートの形が流行した年代から、『ファントム』の舞台は1870-80年代であると推測できます。
そう思うと、エリックが着ている服のスタイルって、『ファントム』の時代より100年も前の、すっごく昔の流行遅れのものなんですよね。
特に1789年のフランス革命以降、男性のスタイルは華やかさを失い、どんどんシンプルな物へと変化していったので、『ファントム』の当時を生きる人からしたら、100年も前の時代遅れなスタイルで華やかに着飾ったエリックの姿は、とても異質なものに見えたと思われます。
(地上に住むキャリエールやシャンドン伯爵と比べても、その服装の違いは明らかなはずです。)
また、エリックはオペラ座の地下に住み、地上の世界とは隔絶して生きていた人物であり、彼は地下で育ったゆえ、地上の人々とは何か違った雰囲気を醸し出していたことは明らかでしょう。
そして、(エリックの服が100年前のものなのか、はたまた当時を再現した舞台衣装なのかは分かりませんが、)
地下で暮らすエリックが放つ、当時の地上の世界とは隔絶された異様な雰囲気は、このような流行遅れのスタイルのお衣装も、一つの要因なのではないでしょうか。
②補色効果で引き立て合う、赤と緑
次に、カルロッタ殺害〜森のシーンのお衣装について。
ここで注目したいのは…その色。
燃え盛る炎のような、真っ赤なお衣装をエリックは着ています。
カルロッタ殺害のシーンでは、エリックの中にある激しい殺意がお衣装の色で表現されているとも言えるでしょうか。
そして(上着は脱ぎますが)カルロッタを殺害したその服のまま、エリックはクリスティーヌの元へ向かいます。(この時点で既にヤバい感じもしますが)
領地(地下に作った人工の森)を見せるために…
ここでのエリックのお衣装は、赤。
そして、森の緑。
この赤と緑という2色は色相環で正反対に位置し、補色という関係にあります。
そして、
補色同士の色の組み合わせは、互いの色を引き立て合う相乗効果があり、これは「補色調和」といわれる。(上記wikiより)
つまり、赤と緑はお互いを引き立て合う効果があり、森の緑によってエリックの赤が目立ち、またエリックの赤によって、森の緑もまた引き立っていると考えられます。
そして、この「赤」と「緑」の補色効果により、このシーンにおける「エリックの狂気」や「赤のイメージとは正反対の、エリックの悲しみや孤独感」、そして「人工の森が持つ虚しさ」といったようなことが、より際立っているのではないでしょうか。
以上、エリックのお衣装に関するあれこれについて考えてみました。
そう思うと、お衣装の形や色って、ただ綺麗だからとかで選ばれてることは無くて、きっと何か意図があってのことなんですよね。
「全ての演出には意味がある」と、何かで思った記憶があります。
これからも細かいところに目を向けて、観劇していきたいです!
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