深掘り*タカラヅカ

男役イメージの研究で修士号を取得した筆者が、宝塚をあれこれマニアックに深掘りします。

『カルーセル輪舞曲』の終着点

こんばんは(*^^*)

今回は前回と“場所”つながりで。

作品は、『カルーセル輪舞曲』を取り上げます!

 f:id:Natsu3ichi:20191025224718j:plain

月組によって2017年に上演されたこの作品は、『モン・パリ』誕生90周年を記念して作られたレヴューでした。

この作品の構造について、公演解説には以下の一文があります。

 日本を出発しパリに着くまでを描いた『モン・パリ』に対し、パリから出発して宝塚を目指す世界巡りの形式で、バラエティ豊かな数々の場面をお届け致します*1

 一見、『モン・パリ』の出発点と終着点を入れ替えただけのように見えますが、実際の終着点は日本ではなく具体的に「宝塚」となっています。

そこで今回は、『カルーセル輪舞曲』の終着点を「宝塚」とした目的について、詳しく考えてみたいと思います!!

 

 

 

 

日本初のレヴュー『モン・パリ』

 

まず、『モン・パリ』が上演されるまでの経緯と、『モン・パリ』の内容について見ておきましょう。

日本初のレヴュー『モン・パリ』が上演されたのは1927年のことでしたが、これには1924年に新しくオープンした宝塚大劇場が深くかかわっています。

この劇場は4000人を収容できるという巨大なものでした。現在の宝塚大劇場の収容人数は2550人であり、その大きさがよく分かりますね。

従来の出し物ではこの大きな劇場を埋めることはできず、新しい演目を探し欧米視察に渡った岸田辰彌が、日本にレヴューを持ち帰りました。こうして上演されたのが、『モン・パリ』というわけです。

 

前述の通り『モン・パリ』は日本を出発し、(中国・エジプトなどを経て)パリに着くまでを描いたレヴューですが、作品の登場人物である、主人公の串田という人物の名前からも分かるように、岸田先生自身の渡航も重ね合わされています。(クシダさんは『レビュー伝説』にも登場しましたね。)

ちなみに、出発点は日本とされていますが、具体的には神戸港を出発するシーンだったようです。

 

 

『カルーセル輪舞曲』における宝塚

 

次に、『カルーセル輪舞曲』の構造について確認します。

劇中ではパリを出発し、アメリカ・メキシコ・ブラジル・シルクロード・インド洋と旅をします。

続くS10「夢のつづき」で、水先案内人の華形の「Welcome to 宝塚!」というセリフがあります。そしてS11「わが巴里よ(日本 タカラヅカ)」、S12「終幕(カルーセル輪舞曲)」と続きます。

水先案内人のセリフより、S10から宝塚についたとみなし、以下宝塚のシーンを詳しく見てみましょう。

 

 

宝塚のシーンにおける、タカラヅカ・レヴューの要素

 

まずS10ですが、ここはラインダンスのシーンです。

続くS11は、緞帳が開いて大階段が登場し、モン・パリの曲に合わせて男役群舞がなされます。その後、トップコンビのデュエットダンスです。

S12は、エトワールがモン・パリの一節を歌って始まるパレードです。

 

各所に『モン・パリ』の曲が使われていることも気になりますが、ここで注目したいのは、宝塚のシーンで行われるラインダンス・群舞・デュエットダンス・パレードというのは、タカラヅカ・レヴューにおける定番の要素であり、タカラヅカ・レヴューを特徴づけるものでもあるということです。

4年以上ヅカファンを続け、たくさんの作品を観劇してきましたが、特に近年はどの作品もこの要素すべてを取り入れており、一つでも欠けていると、気になってしまうように感じます。

また、ラインダンスや大階段、パレードは、『モン・パリ』が初出とのことです。現在私たちが見慣れているものも、『モン・パリ』にルーツがある90年以上の歴史を持つ伝統あるものなんですよね。ただただすごいです!!

(『モン・パリ』での有名な「汽車のラインダンス」は、暁さん中心の場面で再現されていますね。)

 

まとめ

 

宝塚のシーンは、『モン・パリ』の曲を取り入れつつ、『モン・パリ』から受け継がれてきたものも含め、タカラヅカ・レヴューの伝統や特色を示すものであったと言えます。

例えば、ただ終着点を「日本」とし、三味線での群舞とか和テイストを取り入れたシ-ンにして、「日本」のシーンということをアピールする、とかでも十分よかったと思います。

でも安易にそうはせず、終着点を「日本 タカラヅカ」としたのは、

・『モン・パリ』から続くタカラヅカ・レヴューの伝統や特色を示すため、

・そしてそういったものが受け継がれ、上演されてきた「宝塚」という場所の魅力を示すため

だったのではないでしょうか。

 

 

『カルーセル輪舞曲』は稲葉先生の作品です。

現在宝塚大劇場では同じく先生のレヴュー『シャルム!』が上演されていますね。

どんな世界が広がっているか、観劇がとても楽しみです🌸

 

読んでくださって、ありがとうございました🎠

 

(『モン・パリ』とそれにかかわる記念公演については、歌劇団の以下のページが詳しいです)

www.kageki.hankyu.co.jp

 

 

 

 

ブログ村に参加しております。

ポチして頂けたらとても嬉しいです!更新の励みになります!

にほんブログ村 演劇・ダンスブログ 宝塚歌劇団へ
にほんブログ村