深掘り*タカラヅカ

男役イメージの研究で修士号を取得した筆者が、宝塚をあれこれマニアックに深掘りします。イラストや創作も。

戦前の男役は、オフに男らしく振る舞うことを禁じられていた⁉︎【オフにおける男役イメージの変遷⑤】

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戦前の男役シリーズも今回がラスト!

 

今回は、

「戦前の男役は、オフに男らしく振る舞うことを禁じられていた⁉︎」

ということについて書いていきます🌠

 

 

 

現代の男役は、オフでもかっこいいポーズを取ったり、キザな仕草をしたりと、オフにおいても男らしく振る舞っていますよね。

 

 

しかし戦前の男役は、そのような振る舞いは禁じられていました😳

これは一体、どういうことなのでしょうか…⁉

 

前回確認した「変態」という概念も再び登場するので、思い出しておいて下さいね〜🙌

 

 

前回の④はこちらから👇

natsu3ichi.hatenablog.com

 

 

 

 

 

 

一三先生の憂鬱

時は1935年2月、レヴュー時代真っ盛りで男役人気が爆発していた頃。

「僕、兄貴、君」というような男性の言葉が生徒内ではやりつつあるという話を聞いて、一三先生は一寸憂鬱になります*1

 

そこで、男役だからといってその平生の態度までが「僕」「兄貴」ではないようにとした上で、そのようなことを生徒内で話し合うよう、男役の葦原邦子さんに手紙で求めました*2

 

 

オフにおける異性装と「変態」

このような指導がなされた理由として、オフまで男らしく振る舞うことは、前回確認した「変態」度を増すことに繋がってしまうからという点が考えられます。

 

例えば、同じ異性装の芸能である歌舞伎も、島村抱月により「日本の旧歌舞伎といふ如きは変態芸術」という批評がなされるなど、「変態」イメージが付いてしまったそうです。

 

そもそも、江戸時代の女形は初代芳澤あやめの教えにより、日常生活も女として暮らしていました*3

ja.wikipedia.org

 

 

しかし「変態芸術」の汚名を避けるため、歌舞伎界自身が、女形も舞台以外の日常を男性的に振る舞うよう強く求めるようになったそうです*4

 

確かに今の女形さんは、オフでは女装してないですよね~!

(というわけで(?)女形の中で一番大好きな、中村七之助さんのオフのお写真記事を貼っておきます😌💕BIG LOVE…)

www.fujingaho.jp

 

 

つまり異性装の舞台において変態のイメージを少しでも遠ざけるためには、舞台上のイメージをオフにまで引きずらないことが大切であったということでしょう。

 

 

 

葦原さんのご返答

上述の手紙に対し葦原さんは、以下のように返信しました。

 

生徒たる私達は絶対に、と云っても過言ではない位、家庭、或いは寄宿舎にあつては、何でもない普通の女の子と変りがないので御座います。それにどなたがお耳に入れたかは存じませんが、宝塚の学校の生徒同士の間で、君、兄貴、僕などといふ言葉を口にする者は一人もありません。それはどうか御安心下さいませ*5

 

以上のように、生徒はみな舞台を降りたら普通の女性であると断言し、一三先生が懸念するような言葉を使う者も存在しないと答えておられます。

 

 

 

ファッションの面から見ても、「普通の女性である」という男役の意識は見えまして…

 

 

オンでは爆イケな男役だった葦原さんが、

(葦原さんでお薦めなのは『憂愁婦人』カール役の、前髪をハラリと垂らしたプロマイドです…

今でも誰かの人生を狂わせるレベルでかっこいいと思います💘)

 

1937年の『宝塚グラフ』におけるオフのポート(左ページ)では、袴を着てばっちり「女学生」アピールをしておられます♥

dl.ndl.go.jp

 

 

また右ページの小夜福子さんは、戦前においては少数派な洋服姿ですが、こちらもワンピースという、女性としての装いをしていらっしゃいますよね👗

 

 

 

ファンは男らしさを求めていた?

加えて葦原さんは、「男役に関し、舞台で男になるから普段までもそのつもりで考えているファンには弱っている*6」とも述べておられます。

 

つまりこの返信が書かれた1935年当時から、舞台上の男役イメージをオフにまで重ねて見るという、今と同じようなファンの受容の形があったということが確認できます。

 

今も昔も、ファン心理は同じということですかね~

いやはや面白い!!!!!

 

 

しかし「変態」というイメージを避けるためにも、そのようなファンの期待には答えず、舞台を降りたら男役は女性であることを求められていました。

そして男役自身もまた、それをしっかりと守っていたということが分かります。

 

 

 

もし一三先生が生きておられたら…?

このように一三先生は、

「男役がオフでも男らしく振る舞うことは断固反対!」という立場を取っておられました。

 

もし今も一三先生がご存命で、オフでも男役らしい服を着てかっこよく振る舞う男役の姿をご覧になったら、どう思われるでしょうか?

「けしからん!」と思われるのでしょうか…😅

 

 

ですが、そもそも一三先生がこのような立場を取ったのは、当時男装が「変態」とみなされていたのが理由でした。

 

なので、男装がもはや変態と思われなくなった今では、立場が全く変わっている可能性もありますよね❗

 

 

 

「男役 VS 変態イメージ」に興味を持たれた方は、

ジェニファー・ロバートソンさんの『踊る帝国主義―宝塚をめぐるセクシュアルポリティクスと大衆文化 』もご覧ください~!

 

今まであまり大っぴらに語られて来なかった宝塚の側面に興味のある方は、読んでいて絶対に楽しいと思われます😎

(「変態イメージ」とか、同性愛とか、ジェンダーとか、帝国主義とか、オリエンタリズムとか、軍のプロパガンダ・レヴューとか…

これらのキーワードにピンときた方は、是非にです!)

 

 

 

次回はいよいよ、ファッションに目まぐるしい変化が起こる戦後へと突入します👔

洋服が主流となる中で、男役はどのような服装をしていったのでしょうか…❓

 

 

 

 

⑥はこちらからどうぞ👇

natsu3ichi.hatenablog.com

 

 

 

 

 

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*1:小林一三「『男装の麗人』とは?」『歌劇』1935年4月号、歌劇発行所、p.11

*2:小林、前掲刊、p.11

*3:三橋順子『女装と日本人』講談社、2008年、p.89

*4:三橋、前掲書、p.169

*5:小林、前掲刊、p.11(旧字体新字体に改めた)

*6:小林、前掲刊、p.11

「男役」の確立と、髪を切った乙女たち【オフにおける男役イメージの変遷④】

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こんばんは✨

最近、ブログを書きたい欲が爆発しているなつみちです🔥

 

「オフにおける男役イメージの変遷」シリーズ、今日もバリバリ書いていきますよ~💪

 

 

 

前回の③では、舞台に立つ女性のマイナスイメージを避けるため、劇団員を「生徒」と定義するという小林一三先生のイメージ戦略を確認しました。

 

natsu3ichi.hatenablog.com

 

 

「生徒」と呼ぶことでこの問題は一件落着…と思いきや、

宝塚はその後も、様々なマイナスイメージとの闘いを続けることとなります…⚡

 

 

 

 

レヴューの導入と、「男役」の確立

本シリーズで中心的に扱う、「男役」という存在🎩

宝塚の歴史において男役が登場し確立するのは、レヴューというジャンルを輸入し上演したことがきっかけであるとされています。

初の上演作品である『ドンブラコ』にも男性の桃太郎役が登場するなど、レヴュー導入以前も女性が男性役を演じてはいたのですが、それは今に連なる「男役」とはまた異なるものでした。

 

1927年に日本初のレヴュー『モン・パリ』が上演され、宝塚はレヴュー時代に突入。

『モン・パリ』では初めてスーツを着た紳士の役としての「男役」が初めて登場し、またレヴューの中に徐々にロマンスの要素が入り込むようになり、娘役との恋愛を演じる「男役」が確立されていったそうです*1😍

 

 

初期の男役の髪は長かった!

こうして誕生し確立した男役でしたが、当時における男役のヴィジュアルは、一体どのようなものであったのでしょうか?

そのトピックスとして一つ、男役の髪型が挙げられます。

 

現在の男役は、地毛もショートカットにするのが恒例ですよね。

しかし当時の男役は、髪が長いまま男役を演じていたそうです😳

 

では一体どのように男役を演じていたのかというと、髪を丸めてネットをかぶって、その上に帽子をかぶるというものであり、それはネットで頭がふくらんだ頭でっかちのイメージだったみたいです*2

 

 

下記資料における右ページの写真は、1930年に上演されたレヴュー『パリゼット』の男役なのですが、

dl.ndl.go.jp

 

確かに長い髪を隠した帽子が大きくて、スタイリッシュとは言い難い感じですよね…🙄

 

 

 

良家の子女は断髪NG

見栄えが悪いにもかかわらず、なぜ男役たちはそのような方法を取ったのでしょうか?

理由としては、以下の二点が挙げられます。

 

一点目は、当時における髪を切ってしまうこと、つまり断髪に対するイメージが、宝塚が目指す「良家の子女」イメージと相容れなかったからです。

当時断髪をしているような女性は、世間から一種特別な眼で見られていたそう*3

 

今でこそ女性のショートカットはごく一般的ですが、およそ90年前は女性が髪を切ることに対する風当たりが、まだまだ厳しかったんですね…

 

 

ましてや、タカラジェンヌは舞台人。

前回確認したように、せっかく「生徒」「良家の子女」イメージ作戦で頑張っていたのに、断髪してそのイメージが壊れてしまったら…というところですよね😨

 

 

男装=「変態」⁉

また二点目として、完全な男装による「変態」イメージを避けるためという点が考えられます。

演出家の高木史朗先生は、当時の男役の在り方に関して以下のように語っておられます。

 

男役という考え方も、無理に男らしく見せるとか、変態的な疑似男性的なあり方は否定された。あくまで少女が男の役をやっているということで許される範囲の自然さをとった*4

 

 

つまり長い髪を切ってしまい、完全な男装により近づくというよりは、帽子の下には長い髪が隠されていることが明らかであり、「これはあくまでも少女が演じている男性ですよ☺」ということがヴィジュアル的に分かるという面を、敢えて残していたということでしょう。

 

 

ところで、高木先生のお話に登場した「変態」という言葉は、当時異性装がどのように受け止められていたかを示しています。

 

明治末~大正期には、異性装を禁忌とする西欧の精神医学が導入され、異性装者が「変態性慾」の持ち主と見られるようになります*5

つまり、異なる性を装う男装や女装といった異性装は、「変態」としてみなされていたのです😲

 

 

そう、男装にもまたマイナスイメージが存在していました💦

長い髪のまま男役を演じるというのは、この「変態」イメージを少しでも緩和する策でもあったということでしょう。

 

 

 

髪を切った乙女たち

しかし舞台上での見栄えを向上させるために、男役たちは断髪を行います…✂

男役として初めて断髪したのはタカラジェンヌではなく、松竹歌劇団水の江瀧子さんで、それは1931年のことでした。

 

ja.wikipedia.org

 

(先日OGの凰稀かなめさんが、彼女を演じておられましたね~❣)

www.danceview.co.jp

 

 

 

続く1932年、『ブーケ・ダムール』を上演する際、門田芦子さんがついに断髪を敢行‼

(下記資料左ページに、断髪した門田さんのお写真が載っています)

dl.ndl.go.jp

 

門田さんは、劇団の理事長にひどく叱られたそうです…*6🥲

 

 

 

断髪しちゃったけど…

そして、断髪の波は男役の間で更に広まって行きます。

と言っても、断髪へのハードルは依然高かったようで、切るときに家族会議をした上で切ったなどという状態であったそうです*7

 

 

また、自身の判断で断髪を行ってからも男役たちは、家族など周囲の人々にどう思われるのか、叱られはしないかと心配をしていたみたいです😟

 

例えば、『歌劇』1933年9月号には「断髪漫談」という記事が掲載されましたが、そこではそのような男役のエピソードが確認できます。

およそ90年前の『歌劇』をめくってみると…📖

 

 

・お母さんが大阪駅で会つた瞬間の大喝一声にとてもなやんでゐました。(中略)よしどんな事が有つても帽子は取つてやらないぞと悲壮な決心をしました。(大路多雅子)

 

・お家からは家内中そろってお父様のお墓参りをしなければならないので一度帰つて来る様にと何度も/\手紙を寄こすのですが頭が気になつてどうしても帰る気になれませんでした。(秋風多江子)

*8

 

以上のように、

「短い髪を見られて、母親に叱られるのではないか…😰」

「断髪しちゃったから帰省しづらい…😫」

といった、男役の心の内が明らかとなっていますね。

 

 

 

一三先生のご意見は?

一方、自身が掲げる「良家の子女」イメージに反する断髪が男役の間で広まったことに関して、一三先生はどのように考えておられたのでしょうか?

もしや、大変にお怒りだったとか…?🥺

 

 

1934年の『歌劇』10月号にはズバリ、「「生活の質素」と「断髪」の話」と題された先生による記事が掲載されており、以下はその中で断髪に関する箇所を抜粋したものです。

 

レヴユウの盛大となると同一歩調に、断髪礼讃の声が学校中を風靡して、どうすることも出来ないようになつて仕舞った。舞台上の必要上から、スマートの男役や、ダンス専科の役どころから見て断髪は勿論必要である。然し、一面日本人としてほこるべき黒髪を持つ女として考えると、猫も杓子も断髪するのはどうかと思ふ*9

 

このように、舞台上での必要性から断髪を半ば容認する姿勢ではあるものの、やはり日本女性として誇るべき黒髪を切ってしまうという点に関しては、断髪に反対しているということが確認できますね。

 

(めちゃくちゃお怒りとかではなくてよかった…(´▽`) ホッ)

 

 

 

ファンの反応は?

最後に、ファンは男役の断髪をどのように捉えていたかについて見てみましょう。

当時の「高声低声」にはちょっと長いですが、以下のような投書が寄せられていました🌼

(なんと、「高声低声」コーナーはこんなにも昔から存在していたのです…!)

 

小夜、葦原さんが断髪された二人とも今宝塚の男役を背負って立つ人だけに双手を上げて賛成したい。之れでどれ程舞台の上の男役によりスマートさが見られるかと思ふと楽しみです。断髪しても生徒さん自身が日常宝塚の生徒としての誇りと品位さへ持つならば舞台の上に清さと溌剌さを加へる丈でも嬉れしい事ではありませんか。(澁谷美登里)*10

 

 

以上より、舞台での男役の見栄えがよくなることから、断髪には容認であったファンの姿勢が伺えます。

 

 

当時は断髪反対な劇団・知識人層と、断髪容認なファンとの間で、「断髪論争」なるものが巻き起こっていたようで…

興味のある方は、当時の「高声低声」を調べてみると面白いですよ~🎵

 

 

 

次回は、戦前の男役シリーズの最終回!

一三先生が葦原邦子さんに宛てた、オフにおける振る舞いに関する手紙の内容とは…⁉✉

 

⑤はこちらからどうぞ👇

natsu3ichi.hatenablog.com

 

 

 

 

今日もまた、4000字弱のたっぷりボリュームになってしまいました😅

(論文を書き直している時点でしゃーない)

ここまで読んで下さって、本当にありがとうございます✨

 

 

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*1:徳澤奈津子「「男役」の登場」『文藝別冊タカラヅカ それは愛、それは夢』河出書房新社、1998年、pp.170-171

*2: 水の江瀧子水の江瀧子:ひまわり婆っちゃま』日本図書センター、2004年、pp.40-41

*3:白井鐵造『宝塚と私』中林出版、1967年、p.126

*4:高木史朗「宝塚美男美女伝② 燕尾服を着た妖精たち」朝日新聞社編『おお宝塚60周年:「ドンブラコ」から「ベルばら」まで』朝日新聞社、1976年、p.80

*5:三橋順子『女装と日本人』講談社、2008年、pp.150-152

*6:白井、前掲書、p.123

*7:白井、前掲書、p.126

*8:「断髪漫談」『歌劇』1933年9月号、歌劇発行所、pp.54-55(旧字体新字体に改めた)

*9:「「生活の質素」と「断髪」の話」『歌劇』1934年10月号、歌劇発行所、p.10(旧字体新字体に改めた)

*10:「高声低声」『歌劇』1933年7月号、p.84(旧字体新字体に改めた)

「生徒」と袴―小林一三のイメージ戦略【オフにおける男役イメージの変遷③】

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こんばんは🌟

ファッションに注目し、オフにおける男役イメージ変遷の謎に迫るシリーズ、第3弾です👘

 

②はこちらからどうぞ👇

natsu3ichi.hatenablog.com

 

 

今回から、戦前~2000年代の男役ファッションを順に追っていくのですが…

③~⑤はオフのファッション前史として、戦前におけるタカラジェンヌや男役に関連する、様々なイメージについて書いていきます✍

 

 

戦前というとかなり昔のように思えるのですが、当時定められた様々なことが、今の宝塚にも息づいていたりします。

 

例えば、宝塚では劇団員のことを「生徒」と呼びますよね。

また彼女たちが式典などで着用する正装は、緑の袴とされています。

 

実は、このような「生徒」呼びや袴の着用は、戦前に定められたものなのです!

 

 

では、どうしてこのように決められたのかは、皆さんご存じですか?

そこには創立者である小林一三先生の、大きなイメージ戦略がありました…😲

 

 

今を知るには昔を知れ・・・

というわけで、100年ほど前の宝塚へとタイムスリップしましょう🕰

 

 

 

 

宝塚歌劇の設立とその理念

宝塚歌劇の前身となる宝塚唱歌隊が組織されたのは、1913年7月のことでした。

同年12月に宝塚少女歌劇養成会へ改称したのち、翌年4月には記念すべき第一回公演が行われます。

上演された作品は、皆さんご存じ『ドンブラコ』ですね🍑

 

その後1919年には宝塚音楽歌劇学校が設立され、その生徒と卒業生で、宝塚少女歌劇団*1を組織するという形を取るようになりました。

 

 

宝塚歌劇設立の理念としては、「組織モデルは学校とし、そこは良妻賢母を育てる花嫁学校とする」というものが挙げられます🏫

また舞台に立つ劇団員は、女優ではなく「生徒」と定義されました。

 

創立者小林一三先生はこれらの点をアピールし、タカラジェンヌ=「良家の子女」イメージの形成につとめます*2

 

 

「舞台に立つ女性」のマイナスイメージ

なぜ一三先生は、このようなイメージ戦略を行ったのでしょうか?

それはズバリ、当時における「舞台に立つ女性」の捉えられ方が理由です。

 

 

宝塚が設立された当時、舞台に立つ女性というのは主に、

文明開化後に登場した女優と、旧来の芸能の女である芸者などの、二つが挙げられます。

 

まず女優は当時、身持ちの悪い「ふしだらな女」と世間の非難を浴びていました*3

 

20世紀前半に活躍した女優の森律子は、女優になったがために女学校の名簿から除名されてしまったというエピソードもあります。

ja.wikipedia.org

 

 

また芸者などの旧来の芸能の女たちは、芸を売り身も売るというイメージの存在だった*4そうです。

 

 

 

宝塚の劇団員=「生徒」!

このような、舞台に立つ女性に持たれるマイナスイメージを避けつつ、宝塚歌劇の公演を行うにはどうしたらよいのでしょうか?

 

そこで一三先生が取ったのが、宝塚の劇団員を「生徒」と定義する戦略でした。

 

宝塚が演技者を女優ではなく「生徒」と呼び、組織モデルを「学校」とし、そのモットーを「清く 正しく 美しく」と繰り返したのは、前時代の女芸がひきずる性的なイメージを払拭するためでした*5

 

つまり当時における「舞台に立つ女性」のイメージと切り離すため、「生徒」「良家の子女」イメージを全面に打ち出したということです。

 

 

 

「生徒」イメージを作る袴

さらに、「生徒」たちの私生活にも指導がなされます。

 

ファッションに関したところで言うと、私服も華美に流れないため、袴姿の学生服を制服として、質実な教育が行われました*6

 

袴の着用を定めることによって、ファッションという視覚面からも「生徒」をアピールすることができますよね💚

 

 

 

 

以上のように、宝塚歌劇の出発点としては、いかに女優・芸者イメージを寄せ付けないかという場所から始まったのでした。

 

戦前においてはその後も、様々なマイナスイメージからの差異化・脱却を図る闘いが続いていきます…🥊

 

 

 

 

※今回の内容をもっと詳しく知りたい!という方は、

川崎賢子さんの『宝塚 消費社会のスペクタクル』

bookclub.kodansha.co.jp

 

及び、『宝塚というユートピア

www.amazon.co.jp

 

をご参照ください。

 

また22年2月には、新刊『宝塚 変容を続ける「日本モダニズム」』が発売されています~📚(忙しくて筆者は未読です💦早く読みたい…)

www.iwanami.co.jp

 

 

 

次回はついに、レヴューの導入により「男役」の存在が確立🎩

しかし、当初は男役の髪は長いままでした😮

 

その理由を調べると、髪を短く切ること自体がNGだったり、 そもそも男装は「変態」だとみなされていたり…

 

 

それでも舞台上でかっこよくなるため、髪を切った乙女たち…✂

およそ90年前に起こった、断髪ムーヴメントについて書いていきます❗

 

 

④はこちらから👇

natsu3ichi.hatenablog.com

 

 

 

 

 

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*1:宝塚少女歌劇団から宝塚歌劇団へと改称が行われるのは、1940年のことである。

*2:川崎賢子『宝塚というユートピア岩波書店、2005年、p.4

*3:ジェニファー・ロバートソン『踊る帝国主義―宝塚をめぐるセクシュアル・ポリティックスと大衆文化―』堀千恵子訳、現代書館、2000年、pp.18-19

*4:川崎(2005年)、前掲書、p.4

*5:川崎(2005年)、前掲書、p.130

*6:白井鐵造『宝塚と私』中林出版、1967年、p.11

ロマ劇*美雪姫の着せ替えを作りました♥

こんばんは🌙

絶賛『今夜、ロマンス劇場で』ロス中のなつみちです。

 

月城さんのまっすぐな愛や鳳月さんのハンサムガイっぷり、暁さんのねちぬる感など、このお芝居の見どころはたくさんありますが…

 

中でもお気に入りなのは、海乃さん演じる美雪姫♥

色鮮やかなお衣装を着こなしておられて、まるでファッションショーみたいでしたよね✨

 

 

どのお衣装も素敵だったので、私の特技であるイラストを生かして、

美雪姫のきせかえを作ってみました👗

 

 

\\\\\\じゃーん!!/////

 f:id:Natsu3ichi:20220413144058j:plain

 

 

 

 

こちら、A4サイズに印刷してハサミで切り取れば、実際にきせかえとして遊べるようになっています✂

 

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💛美雪コレクション💛

 

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皆さま、ぜひぜひやってみてください🎶

 

 

※水玉のドレスだけ作画をミスってしまったので、このように脇下に余白を残して切ってくださいませ~💦

 f:id:Natsu3ichi:20220413202040j:plain

 

 

 

 

 

宝塚ではないですが、以前『マドモアゼル・モーツァルト』の華優希さんコンスタンツェのきせかえを作ったこともあります🎼

 f:id:Natsu3ichi:20220413144114j:plain

 

※こちらもきせかえとして遊べるように作ってあります。

 

 

 

 

小さい頃は紙のきせかえで遊ぶのが大好きだったので、このように自分の手できせかえを作れたなんて、夢のようです…💖

 

今後も娘役さんのきせかえシリーズを作ってみたいです🎀

 

 

 

※こちらに掲載したきせかえは、あくまでご自身で楽しまれる範囲でご利用ください。

無断転載やお手紙への使用は、固く禁じます。

 

 

 

読んで下さってありがとうございます🎩🌟

 

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男役にパンツスタイルを求めるのはなぜ?【オフにおける男役イメージの変遷②】

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こんばんは☆

ファッションに注目し、オフにおける男役イメージ変遷の謎に迫るシリーズ、第2弾です👖

 

 

前回の記事では、「昔は男役もスカートを履いていた」という衝撃の事実を確認しました💥

natsu3ichi.hatenablog.com

 

ただ昔はそうだったとしても、

例えば今のトップスターさんが入出やポートなどでスカートを履いていたら、

ほとんどのファンはおそらく「ガーン😨」ってなりますよね。

 

 

この「ガーン😨」について、もう少し深く考えてみます。

このような感情を持つのは、

私たちファンが「男役はオフでもかっこよくパンツスタイルで決めていて欲しい!」と考えており、

スカートによってその希求が打ち砕かれてしまうからに他ならないでしょう。

 

 

では、なぜ私たちファンは「男役はパンツスタイルでいて欲しい」と考えるのでしょうか❓

 

「男役はパンツスタイルが当たり前じゃん!」と思われるかもしれませんが、

そこにはこれまであまり言及されて来なかった、とあるファン心理が隠されているのです…!

 

 

 

 

 

 

タカラジェンヌの四層構造

前述の”とあるファン心理”を明らかにするべく、

今回はタカラジェンヌがどのような存在であるのか?ということを明らかにした研究を、一つご紹介しましょう。

 

 

 

社会学者の東園子さんは、「タカラジェンヌの四層構造」という言説を提唱されています。

 

この構造に関しては、

青弓社編集部(編)『宝塚という装置』に収録されている「『宝塚』というメディアの構造――タカラジェンヌの四層構造と物語消費」

www.seikyusha.co.jp

 

及び、東さんの著書『宝塚・やおい,愛の読み替え』内で読むことが可能です。

www.shin-yo-sha.co.jp

後者が後に出版されており、前者に加筆修正がなされています。

 

 

東さんによるとタカラジェンヌは、

「役名の存在」

「芸名の存在」

「愛称の存在」

「本名の存在」

という四つの層を持つそうです。

 

この四つの層に関して、一つ一つ詳しく見て行きましょう!

 

 

 

「役名の存在」

まず「役名の存在」ですが、

これは上演される作品の登場人物を演じている状態の存在です*1

 

宝塚において上演されるのはお芝居とレヴューが中心ですが、

お芝居に登場する何らかのお役を演じているのが、「役名の存在」にあたります。

 

 

 

「芸名の存在」

一方レヴューにはほとんどの場合、ストーリーはありません。

したがってレヴューにおいてタカラジェンヌは、何らかの役を演じるのではなく、芸名の自分そのままで舞台に登場し歌や踊りを披露しています。

この芸名で名乗る男役/娘役という存在が、「芸名の存在」です*2

 

 

以上の二層は舞台上、つまりオンにおける存在です。

 

 

「愛称の存在」

 

続く「愛称の存在」が、本シリーズで言うところの「オフ」に相当します。

「愛称の存在」とは、雑誌などファン向けのメディアやイベントで披露されている、舞台を降りたタカラジェンヌの素顔です*3

 

具体的には、歌劇やグラフ、スカステに登場している時のお姿や、入出待ちやお茶会でのお姿ですね。

また、「素化粧の時のジェンヌさん」と表現することも可能かもしれません。

 

 

ここで注目したいのは、

「愛称の存在」における素顔は決してご本人そのままの素顔ではなく、

タカラジェンヌのイメージとしてふさわしいように作り上げられた素顔であるという点です。

 

もうピンとくる方もいらっしゃるかもしれませんが、ここで登場するのがいわゆるすみれコードです。

 

宝塚では「清く正しく美しく」「夢を売るフェアリー」といったイメージを守る形で、役者の情報や言動が「すみれコード」と呼ばれる暗黙のルールによって規制されています[4]

 

このすみれコードに抵触せず、タカラジェンヌのイメージにふさわしいとみなされたものだけを、タカラジェンヌは「愛称の存在」においてファンの前で公開することとなります。

 

 

 

「本名の存在」

そして最後に「本名の存在」とは、ファンに対して隠されているタカラジェンヌの素顔を指します*4

 

皆さんご存じの通り、本名や実年齢、体重、給料や恋人の有無など、前述のすみれコードに抵触する情報はこの存在に隠され、私たちの前では決して明かされません。

 

このように、すみれのヴェールに隠されたお姿というのも、ジェンヌさんはまたお持ちであります。

 

 

 

四層の連続性

以上、東さんが提唱した四層構造の各層を、詳しく確認してきました。

よく考えると、確かにタカラジェンヌはこのような4つの層を持っていると言えますよね!!

 

 

 

さて、最初に述べた”とあるファン心理”に関わって重要なのは、

これらの各層は全く無関係なものとしてばらばらに作られているのではなく、互いに連続性がある*5

という特性です。

 

タカラジェンヌはこの四層の重なりとして存在しており、舞台上と舞台裏の姿が一体化した形でファンに捉えられている*6というのです。

 

 

つまり私たちファンは、「役名の存在」~「本名の存在」の4つの層全てを重ねて、

タカラジェンヌを見ているとされています。

 

この見方に関して一つ例を挙げるとすれば、お芝居を観劇している時のこと。

今夜、ロマンス劇場で』にて、月城かなとさんは牧野健司というお役を演じていますが、

たとえ健司役を演じていても、私たちファンは健司のお役に「月城かなと」というタカラジェンヌの存在を重ねながら、お芝居を見ていますよね🌙

 

 

 

 

もう一度繰り返すと、

タカラジェンヌのオンとオフには連続性が存在しており、

ファンはタカラジェンヌのオンの姿とオフの姿を重ねて見ています。

 

したがって、私たちファンが「男役はオフでもパンツスタイルでいて欲しい!」と求めるのは、

タカラジェンヌのオンの姿とオフの姿を重ねて見ており、その姿は連続性があって欲しい」というファン心理が働いているから

 

なのです

 

 

 

 

昔は各層がズレていた?

一方、前回の記事で紹介した甲にしきさんの現役時代においては、男役もオフではスカートを履いていました。

 

したがって当時はこの四層に連続性が無く、

「役名の存在」「芸名の存在」と「愛称の存在」の間に、ズレが生じている状態であったとも言えるでしょう。

 

 

 

また甲さんのインタビューには、

昔のお客様は、プライベートは普通の可愛らしい女の子なのに舞台にあがるとかっこいい男役を演じるというギャップや、役者の化け具合に魅了されていたのだと思いますね*7

 

とあったように、ファンはそのズレに拒否反応を示すのではなく、

むしろオンとオフのギャップを楽しんでいた可能性も示唆されています。

 

 

 

次回からは、戦前から2000年代まで男役のオフ・ファッション史を追っていきますが、

この「オンとオフのズレ」は、ずっとチェックして行って下さいね!

 

 

 

 

次回は時間を100年ほどに前に巻き戻し、

劇団設立時のタカラジェンヌについてサーチ🔍

 

タカラジェンヌはなぜ「生徒」と呼ばれるのかという疑問や、

当時に制定された制服である緑の袴について

書いていきます🎀

 

 

③はこちら👇

natsu3ichi.hatenablog.com

 

 

 

 

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*1:東園子「『宝塚』というメディアの構造――タカラジェンヌの四層構造と物語消費」 青弓社編集部編『宝塚という装置』青弓社、2009 年、p.21

*2:東(2009)前掲書、p.21

*3:東(2009)、前掲書、p.22

*4:東(2009)、前掲書、p.22

*5:東(2009)、前掲書、p.25

*6:東園子「話題提供 男役/娘役らしさを装う--タカラジェンヌの私服の演出(日本生活学会第 37 回研究発表大会 公開シンポジウム「異装の考現学」報告) 」 『生活學論叢』17、pp.73-75、2010 年、p.74

*7:小川甲子「新しいことに挑戦しつづけて」『悲劇喜劇』2018 年 9 月号、早川書房、p.17

昔は男役もスカートを履いていた!? 【オフにおける男役イメージの変遷①】

f:id:Natsu3ichi:20220403194842j:plain

 

こんばんは🌙

先日、大学院の修士課程を修了致しました。

 

学部時代より宝塚歌劇の研究を続け、男役イメージの変遷をテーマに修士論文を執筆したのですが、

 

 

大変ありがたいことに、読みたいとのお声を沢山頂戴しましたので…

今回から「オフにおける男役イメージの変遷」シリーズと題し、修論を構成し直したものを更新していきます°˖✧

 

 

このシリーズは、

「オフにおける男役イメージが、どのように形成されてきたか?」

という疑問を明らかにすることを目的としています。

 

解明にあたって注目するのは、男役のファッションです。

後述しますが、ファッションというのはイメージの形成に大きく関わってくるからです。

 

 

論文の「問題の意識」にあたる今回、さっそく行ってみましょう!

 

 

 

はじめに

皆さま、男役はお好きですか??

 

ファンの圧倒的な人気を集め、宝塚歌劇における魅力の中心とも言える男役。

舞台上で究極にかっこいいお姿を見せて下さるのみならず、舞台を降りた後も男役らしいファッションや振る舞いなどで、私たちファンを魅了してやみません。

 

オンでもオフでも、絶えず男役らしくて素敵…♥

つまり現代の男役は、「オフステージにおいても男役のイメージを保ち続けている」とも言えますよね。

 

 

しかし驚くべきことに、昔は男役もオフではスカートを履いていたということを、皆さまご存じでしょうか!?

 

 

男役とスカート 甲にしきさんの証言

花組の男役として活躍し、現在は東京宝塚劇場の支配人を務める小川甲子(芸名:甲にしき、在団:1960年~1974年)さん。

『悲劇喜劇』のインタビューにおいて、自身が現役であった頃の男役と現在の男役で変わった点について、以下のように語っておられます。

 

 昔は舞台の上とプライベートの差がもっと大きかったですね。私のころは男役もプライベートではミニスカートを履いていたんですよ。昔のお客様は、プライベートは普通の可愛らしい女の子なのに舞台にあがるとかっこいい男役を演じるというギャップや、役者の化け具合に魅了されていたのだと思いますね*1

 

なんと甲さんの現役時代は、男役もオフではスカートを履いていたそうです!

 

 

ここで当時の『宝塚グラフ』をパラパラとめくり、オフのポートレートを確認すると……

甲さんのスカート姿が、ゴロゴロ出てきました。

しかも甲さんだけではなく、男役さんはみな確かにスカートを着用していました。ゴクリ。

 

ネットで写真が見られる例でいうと、甲さんと同時代に活躍された真帆志ぶきさん。

1971年の『ノバ・ボサ・ノバ』初演において、主演のソールを演じられた方です。

 

この方のスカート姿が、Wikipediaに掲載されています。

ja.wikipedia.org

 

 

 

また1960年代までは、パンツスタイルの男役さんは数えるほどしかおらず、真帆さんの写真のような感じで、男役はみなスカートを履いていたのでした。

 

オールドファンの方は、「ああ、そんな時代もあったわね」と思われるかもしれませんが、ここ7年ほどのファンである私にとって、この事実はなかなかショックでした…

 

 

男役イメージが変わってきている!

上記のように、男役がスカートを履いていたという事実から、当時の男役はオフにおいて男役らしいイメージの姿ではなかったと分かりました。

 

一方皆さまご存じの通り、現代において男役はオフでも男役のイメージを保ち続けています。

したがって過去と現在とでは、オフにおける男役のイメージが異なっているとも言えるでしょう。

 

オフにおける男役イメージが、過去と現在とでは変わってきている…

そこで本シリーズでは、舞台外すなわちオフステージにおける男役のイメージが、どのように形成されてきたかを明らかにします!

 

 

 

服装の性差

分析に際して注目するのは、『宝塚グラフ』のポートなどで確認できる、オフのファッションです。ファッションというのは、イメージ形成に関して重要な役割を果たすものであるからです。

 

特に男役が男役イメージを作る際には、衣服が持つ性差の記号を利用していると考えられます。この記号に関しては、以下のように説明がなされます。

 

長い間、人は男/女の性差によって衣服を区別し、適宜に使い分けてきた。使い分けは、身分・階層・職業・世代の差にもよるが、どこにいってもまず男女差による衣裳の違いはすぐに目につくものだ。(中略)衣服の区別のしかたは、形態・色彩・模様・生地の差に始まり、紐の結び方、ボタンのつけ方、皺のよせ方にまで及ぶ。衣裳は、まさに豊かな〈記号の森〉である。

その記号の森のなかで、男性/女性の差異を印象付ける記号が他より際立った要素であることは、多くの文化に共通している*2

 

 

つまり、衣服の各要素は男性/女性を示す記号を持っており、それらの記号を受け取って私たちは、着用者に対して男性/女性の印象を抱きます。

(このあたりもっと詳しく知りたい人は、ロラン・バルト記号論をご参照くださいませ)

 

 

もっと簡単かつ具体的に書くと、パンツは男性・スカートは女性という記号を持つアイテムです。

 

また、男性・女性ともに着用するジャケット。

実はよく見ると、男女で襟の合わせが左右逆に作られています。

(男役と娘役がどちらもスーツを着ている場面だと、合わせの違いが分かりやすいかもです。)

 

この襟の合わせという要素が、男性/女性という記号を持っていると説明できます。

 

 

 

したがって男役が男役イメージを作るには、男性の記号を持つファッションを身に纏えば良いでしょう。

実際に男役はオフにおいてパンツスタイルを貫いており、パンツという男性の記号を持つアイテムを利用して、男役イメージを作っています。

 

反対に、オフの甲さんや真帆さんの姿に男役イメージが読み取れないのは、真逆の女性記号を持つファッション―つまりスカートを着用していたことが原因でしょう。

 

このように、男役イメージには衣服が持つ性差の記号が深く関わっています。

したがって男役イメージ形成を論じるうえで、ファッションに注目することが重要であると分かりますね。

 

 

 

次回は、

「そもそも、なぜファンは男役にパンツスタイルを求めるのか?」

という点について考えていきます💫

 

 

②はこちら👇

natsu3ichi.hatenablog.com

 

 

 

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*1:小川甲子「新しいことに挑戦しつづけて」『悲劇喜劇』2018 年 9 月号、早川書房、p.17

*2:石井達郎『異装のセクシュアリティ新宿書房、2003年、p.20

月城・海乃で「怪奇」テーマ【レヴュー創作】☆絵追加

*この記事には、「〇〇さんでこんなレヴューが見たい!」という私の創作を載せています。

従ってこのシリーズには、実在の生徒さんのお名前が登場します。

中には卒業した生徒さんや、トップにはなっていないけれど主演に据えている生徒さん、組んでいない主演コンビ、組替え前の組に出ている生徒さんなども登場しています。

そういったものが苦手な方は閲覧をお控えいただきますよう、よろしくお願い申し上げます<m(__)m>

 

 

 

 

レヴュー愛を爆発させて書き続け、ついにシリーズ30作目を迎えました!!!!!

記念すべき今回は、月城かなとさん・海乃美月さん主演の月組による、「怪奇」がテーマのレヴューです🦇

 

発端は私の

という呟きなのですが、お二人の美しすぎて脆く壊れてしまいそうな雰囲気が、このようなテーマのレヴューに合うのではないかなと思いました!

 

 

タイトルは、

レヴュー・ゴシック『Enchanted Noir(アンシャンティド・ノワール

と致しました。

 

enchantedは英語で「魅了するような・魔法にかかった」

(読み方は英語とフランス語のMix)、

noirはフランス語で「黒」を意味します。

*文法より響き重視

 

テーマカラーを黒とし、漆黒に魅了され引き込まれる作品になるようにと願って付けました。

 

 

 

電飾やセットは以下のような感じで。

f:id:Natsu3ichi:20220326210426j:plain

 

ステンドグラス風の装飾を入れてみました。

 

 

 

それでは、各シーンの紹介に移ります💫

 

 

 

第1章 プロローグ

プロローグは、月城さんたちが住まうChâteau de la lune(フランス語で月の城…☺️)が舞台。

 

カール・オルフの「カルミナ・ブラーナ― おお、運命の女神よ」が歌われて始まります。

カルミナ・ブラーナ - おお、運命の女神よ

カルミナ・ブラーナ - おお、運命の女神よ

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お衣装はみな黒を基調としたスタイルで、ゴシックホラーな世界へと観客を誘います。

 

 

 

 

第2章 Bal fantôme

ディズニーランドにあるホーンテッドマンションの、亡霊たちの舞踏会をイメージしたシーンです。(動画0:22~)

www.youtube.com

 

ただし男役さんたちが人間、娘役さんたちが幽霊という設定です。

 

 

まず鳳月さん・風間さん・彩海さんといった男役さんたちが招待状を掲げ、「不思議な舞踏会に招待されたぞ」と幕前で歌います。

曲はオペラ《ホフマン物語》より、こちらを。

Les contes d'Hoffmann, Act I: Voici les valseurs! (Live)

Les contes d'Hoffmann, Act I: Voici les valseurs! (Live)

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幕が上がると、そこは舞踏会の大広間。

海乃さん中心に、ふんわりとした白ドレス姿の幽霊たちが出迎え、男役と組んでダンスを踊ります。

幽霊の娘役さんたちには青白くぼんやりとしたピンスポットを当て、人間との差を出します。

 

曲は、このような少し怪しげなものを。

Waltz Macabre

Waltz Macabre

  • Hollywood TV Music Orchestra
  • サウンドトラック
  • ¥204
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最後に鳳月さんが海乃さんに愛を語り、二人で銀橋を渡って幕となります。

曲は喜歌劇《白馬亭にて》より、こちらを。 

喜歌劇「白馬亭にて」より それは素晴らしいもの

喜歌劇「白馬亭にて」より それは素晴らしいもの

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ダークかつちょっぴりコミカルな雰囲気のシーンにしたいです。

 

 

 

 

第3章 Narcisse

続いては、月城さん中心のシーン。

ギリシア神話に登場する美少年・ナルキッソス(フランス語ではナルシス)の伝説を一部借用します。

ja.wikipedia.org

 

 

まずは月城さん演じるナルシスが手鏡を持ち、自身の顔に見惚れながらせり上がります。

舞台上のセットは鏡張りで遊園地のミラーハウスのようになっており、鏡の精を演じる組子が至る所から登場。

彼を翻弄するダンスとなります。

 

やがて自身に恋した彼は、鏡の中に取り込まれてしまいます。

せり下がりで月城さんがはけるのと同時に、もう一方のせりからスイセンの花束がせり上がり、それに照明が当たって幕となります。

 

曲はラヴェルの「鏡:蛾」を用います。

鏡 : 蛾

鏡 : 蛾

  • エル=バシャ
  • クラシック
  • ¥204
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月城さんほどの美人なら、自分に恋してしまっても何らおかしくはない気もします…

が、実際は自身の美貌にはあまり興味がなさそうで、且つひょうきんなところがまた好きですね…😌💓

 

 

 

 

第4章 Thé à la rose

中詰めは、薔薇園でのお茶会を舞台にしています🥀🫖

 

スタートは、鳳月さんによるソロから。

ALI PROJECTの「私の薔薇を喰みなさい」を、Sっ気たっぷりに歌って頂きたいです💖

私の薔薇を喰みなさい

私の薔薇を喰みなさい

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www.youtube.com

(イントロが好き)

 

 

続いて、海乃さん演じる薔薇の貴婦人が登場。

曲はオペラ《椿姫》より、こちらを。

歌劇『椿姫』/花から花へ

歌劇『椿姫』/花から花へ

  • 101ストリングス・オーケストラ
  • ワールド
  • ¥255
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手には扇を持って頂き、高貴で艶やかな雰囲気をお願いしたいです✨

 

 

 

そして、月城さん演じる薔薇の貴公子が登場。

海乃さんに、「美しすぎて 君が恐い…」と歌いかけます。

(曲:野口五郎「君が美しすぎて」)

君が美しすぎて

君が美しすぎて

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美しさと恐怖って表裏一体なんですよね…歌舞伎の『四谷怪談』を見るとよく分かります🐀

そんな恐いくらいの美しさというのもまたテーマに相応しいかなと思い、入れてみました。

 

 

最後に、リヒャルト・シュトラウスの「君を愛す」にのせた総踊りがなされます。

6つの歌曲 作品37 第2曲 君を愛す Op.37-2

6つの歌曲 作品37 第2曲 君を愛す Op.37-2

  • 小森輝彦 & 井出德彦
  • クラシック
  • ¥153
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総踊りがなされた後には、鳳月さんによる銀橋ソロ。

曲は、布施明の「君は薔薇より美しい」を。

君は薔薇より美しい

君は薔薇より美しい

  • 布施 明
  • 演歌
  • ¥255
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手には、一輪の赤い薔薇を持って頂きたいです🌹

 

 

 

 

第5章 Automate

トップコンビ中心のシーン。

 

「とある博士が理想の女性を求めて自動人形を作り、それを愛した」という設定の、ストーリー仕立てのシーンです。

 

博士のヴィジュアルは、片眼鏡に髭でお願いしたいです…💕

ja.wikipedia.org

 

 

まず海乃さん演じる自動人形が、月城さん演じる博士の手でガラスケースから出されるところから始まります。

そして博士によって接吻がなされるとともに、背中のねじが巻かれて人形が歌いだします。

曲はALI PROJECTの「Fräulein Rose」を。

Fräulein Rose

Fräulein Rose

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ソロが終わると、博士と自動人形のデュエットダンスとなります。

曲は、ラヴェルの「高雅で感傷的なワルツ」1. Modereを用います。

高雅で感傷的なワルツ : 1 Modere

高雅で感傷的なワルツ : 1 Modere

  • エル=バシャ
  • クラシック
  • ¥204
  • provided courtesy of iTunes

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博士の技術あって見事な踊りを披露する自動人形でしたが、次第に動きがおかしくなっていき、やがて壊れてしまいます。

 

この経過は、同じくラヴェルの「グロテスクなセレナード」に乗せて描きます。

グロテスクなセレナード

グロテスクなセレナード

  • エル=バシャ
  • クラシック
  • ¥204
  • provided courtesy of iTunes

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ところが盲目的な愛ゆえに、博士は自動人形が壊れてしまったことに気付かず、そのままそれを愛し続けます。

 

最後は、博士が自動人形を抱きしめて幕となります。

 

 

理想の人形を作り、壊れてもなおそれを愛してしまうという一種のグロテスクさが、怪奇趣味に繋がるかなと思って考えたシーンです。

あとは海乃さんの人形振りがぜひ見たいです…!!!

 

 

 

第6章 Sorciére

魔法がモチーフのラインダンス。

お衣装はみな黒づくめで、魔女帽子のミニハットを頭にのせます🪄🧙‍♀️

曲はグリークの《ペール・ギュント》より、「山の魔王の宮殿にて」を。

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第7章 ウィンナ・ワルツ幻想(フィナーレ)

フィナーレは、ラヴェルの「ラ・ヴァルス」を使用します。

 

ja.wikipedia.org

 

ラヴェルは初版に、以下のような標題を寄せたそうです。

渦巻く雲の中から、ワルツを踊る男女がかすかに浮かび上がって来よう。雲が次第に晴れ上がる。と、A部において、渦巻く群集で埋め尽くされたダンス会場が現れ、その光景が少しずつ描かれていく。B部のフォルティッシモでシャンデリアの光がさんざめく。1855年ごろのオーストリア宮廷が舞台である*1

 

フィナーレのダンスは、この標題を引用した形とします。

 

ラインダンスが終わると大階段が登場し、燕尾服に身を包んだ1855年の紳士と、当時流行したデザインのドレスを纏った1855年の淑女が、スモークの中から登場します。

ウィンナ・ワルツ華やかなりし頃の亡霊が浮かび上がってくるようなイメージです。

 

導入部分の試聴⇩

ラ・ヴァルス

ラ・ヴァルス

  • provided courtesy of iTunes

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その後は男役群舞と娘役群舞が入り混じる流れで、最後はトップコンビのデュエットダンスで締められます。

ラストは時が来て亡霊が消えていくイメージで、二人ポーズをとったまませり下がります。

 

 

 

第8章 パレード

エトワールは、『WELCOME TO TAKARAZUKA』のプロローグでも美声を響かせた、105期の静音さんにお願いしたいです♬

 

シャンシャンは、黒い薔薇のブーケを♥

 f:id:Natsu3ichi:20220326210515j:plain

 

 

 

 

 

★公開に合わせて、イラストを描きました🥀

 f:id:Natsu3ichi:20220326210530j:plain

 

 

他のれこうみシリーズはこちら🌙🌊☟

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祝☆シリーズ30作!他の作品はこちらからどうぞ🌟

どれもお気に入りばかりです🥰🥰🥰

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